東西統一から30年が経過したドイツ経済の課題 ~旧東独の生産性向上のために必要な投資をどう賄うか~

2020/01/27 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済

○1990年10月3日、ドイツ連邦共和国(旧西独)にドイツ民主共和国(旧東独)が編入されることで、冷戦下で東西に分割されていたドイツが統一を果たした。2020年は、このドイツ統一から30年という大きな節目に当たるが、旧東独では依然埋まり切らない旧西独との経済格差に伴う閉塞感が蔓延しており、排外主義が強い極右勢力の台頭する事態となっている。

○統一と同時に実施された割高な為替レートでの通貨統合は旧東独の購買力(需要)の増加につながった反面で、競争力(供給)の減少という問題をもたらした。その後、旧西独による旧東独へ巨額の開発支援が実施された結果、今日までに東西間の生産性格差は2割程度まで縮小した。もっとも今後は、そうしたサポートの減少もあって両者の格差が固定化されて改善が停滞する公算が大きい。

○今後も東西間にある経済格差を埋めていくのであるならば、旧東独の生産性を一段と改善していく必要がある。そのためには旧東独に限定した経済特区(SEZ)の設立などの政策的対応が不可欠となるが、そのコストを連邦政府や旧西独の州政府が負えるのか、そもそも負うべきなのかという国民的な議論と、政治による決断が求められることになるだろう。

○再統一から30年が経過し、東西対立を経験していない世代も着実に増えてきている。一方で、旧東独の市民の不満は解消されず、それがドイツ政治を不安定化させている。今後の旧東独に対する支援のあり方をどう考えていくかは、今日のドイツにとって非常に重い課題となっている。同時にドイツの経験は、分断国家の統一が非常に困難を伴うものであることを我々に問いかけている。

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