諸外国の法人税改革と日本への示唆

2015/02/06 小林 庸平、横山 重宏
税制
海外

【概要】

  • 日本の法人税負担の高さは、国内企業の立地競争力を弱め経済成長を抑制するものであるとして、税率の引き下げが長らく主張されてきた。そうした指摘を受け、日本でも法人実効税率の引き下げが進められてきたが、2014年12月30日、自由民主党、公明党両党は「平成27年度税制改正大綱」をとりまとめ、法人実効税率の引き下げと課税ベースの拡大が盛り込まれた。
  • こうした法人税改革は諸外国でも数多く行われてきた。例えば、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン等のヨーロッパ諸国では、課税ベースを拡大し、法人実効税率を引き下げる方向で改革が進展してきた。その一方で、各国独自の取り組みも少なくない。例えばオランダでは事前裁定制度を導入し、課税における不確実性を減じる措置が講じられている。イタリアではみなし利息控除(ACE)と呼ばれる法人税制を導入し、資金調達に対して中立的で投資を阻害しない仕組みを取り入れている。
  • 諸外国の法人税制・法人税改革から、以下のような日本への示唆を指摘できる。
  • 第一が、グローバル化の中での法人税制の再構築のトレンドである。ヨーロッパ諸国を中心として、法人実効税率を引き下げ、課税ベースを拡大する形の法人税改革が進展してきているが、日本の近年の動向もこうした流れに沿ったものであるといえる。
  • 第二が、法人実効税率引き下げに対するスタンスである。法人実効税率引き下げと課税ベースを拡大する改革は、ヨーロッパ諸国を中心とした国際的なトレンドであるが、先進諸国の中で、今後も法人実効税率の引き下げが行われていくかは定かではない。法人税は、企業の立地を決めるさまざまな要因のひとつに過ぎないため、国内のインフラ整備やビジネスサポート政策の充実などを通じて、国全体としての立地競争力を高めていく事を目指している国が多い。
  • 第三は税制の不確実性の抑制である。税制の不確実性は、不可逆性の大きな意思決定に影響を与える可能性が示唆されるが、オランダで導入されているATR(事前税務裁定)やAPA(事前価格合意)、水平的モニタリングは、企業の意思決定に対する税制の不確実性を減じる措置だと解釈できる。今後の法人税改革においては、実効税率や課税ベースに関する議論だけではなく、制度の不確実性を低下させる視点についても考慮すべきだと考えられる。
  • 第四は経済活動に対して中立的な法人税制の実現である。イタリアで導入されているACEは資金調達の中立性を確保する法人税制であり、経済理論から示唆される望ましい税制を現実化したものだと言える。理論と実証に基づきながら、より良い税制を作り上げていこうという姿勢は、日本の法人税改革にも大きな示唆を与えるものと考えられる。
  • 最後に第五が、外形標準課税に対するスタンスである。日本では、地方法人税は外形標準的性格が徐々に強められてきているが、外形標準課税は政争の具となりやすいためか、必ずしも国際的なトレンドとは言えない。アメリカミシガン州では外形標準課税は廃止されており、ドイツでもかつてに比べると地方法人税の外形標準的性格が弱められてきた。イタリアも2015年度から、無期契約労働者の労働コスト全てが地方法人税の課税ベースから控除されることになり、外形標準的要素が弱められた。

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