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海外ホットライン
2006.04.11 No36 海外人材育成(トレーニー)
各企業では、桜の花の下、新年度のスタートと共に新入社員が入社してくる。海外事業のスタートの場合も同様で、例えば海外に初めて製造拠点を設立する場合には、生産ラインのトップ(いわゆる「工場長」)の他、技術・営業分野の人材が投入されることになる。これら、年齢・肩書や業務経験こそ異なるものの「海外」事業についてはピカピカの新人というわけである。
拠点設立の際に考えるべき「人・物・金」の条件の中で、意外と疎かにされているのが「人」の問題であることは以前に採り上げたが、企業規模の大小、ノウハウの多寡に関わらず海外進出が進展している昨今、大企業といえども海外派遣に適任な人材が払底しつつある状況が顕在化してきているようだ。ましてや初めて海外事業に取り組む場合には、適当な人材を外部採用するか、社内各部署から「余人を以って代え難い」人材を社命で「海外」事業に投入するか、のいずれかにならざるを得ない状況である。
このような海外要員のうち、若手社員を念頭に、ここではトレーニー(Trainee研修生)と称して、製造等の直接業務以外の「業務周辺」分野のノウハウ習得上の留意点や、経験譚を披露してみたい。
当然ながらトレーニーとしての業務習得は、将来、中核社員として正式海外赴任したあとになって、いまさら聞けないような基本的事項全般を現場で全てマスターすることにある。すなわち、全ての業務や先輩上司から命じられる雑務一切が守備範囲となる。
(1)空港送迎:本社出張者や大事な取引先からの来訪等、なにはともあれ空港への出迎えから始まる。空港は現地の行政や文化が凝集しているといっても過言ではない。入国、通関手続き等での注意点は事前の連絡が肝要。空港からホテルまでの移動中は現地の政治経済状況等も披瀝したい。開発途上国では3時間以上前に搭乗手続を求められる場合がある。知らずに1時間前に空港まで送って、結局乗れずに翌日になってしまい、大事な取引先の怒りを買った例もある。また、逆に日本からトレーニーが赴任したものの、出迎えもなく電話しようにも現地通貨のコインも持っておらず四苦八苦、最初から涙で赴任生活が始まった話もある。
(2)アポイントメント:対顧営業は相手と会うことが肝心であり、「決められた場所に決められた時間に到着する」ことで70%は達成されるといわれる。取引先訪問のために、コミューター(各停の飛行機便)に乗って、3空港目で降りてレンタカーで3時間移動、現地で訪問先を探すといった行程は珍しくない。これに時差(米国では、同じ州内で時差がある例も)が加わると、行程が順調にいったとしても、予定通りの訪問はなかなか大変である。ちなみに開発途上国の多く(および一部の先進国)では地図を読めるタクシーの運転手はまずいないと云われる(安全上、原則タクシーは利用しない)。
(3)現地情報提供:マクロ政治経済情報やマスメディア情報のとりまとめも大事ではあるが、日本で入手出来るような情報の価値は低い。現地に駐在しているからこその、まさに眼で見、耳で聞き肌で感じた情報こそが、「なるほど」と評価してもらえる。身の回りは「価値ある情報の宝庫」という視点で見てみたい。
(4)食事接待:各国の料理を味わっていただきながら親交を図る食事接待。相手方の嗜好を踏まえて料理店、料理内容を選ぶことが肝要であろうが、選ぶには予め自分で知っておく必要がある。例えば飲茶のように数多くの種類があった場合、全ての種類を食べてみて感想やお薦めメニューを記録する、といったことも必要になる。土産品選びも同様である。
(5)観光案内:万里の長城を百回案内した、ビバリーヒルズに2百回案内した、と自慢(自嘲?)する話を聞く。なにはともあれ、相手は初めての出張かも知れない。初心にかえってご案内をよろしく。
砂漠の砂に水が吸い込まれるようにノウハウが蓄積されるのがトレーニーの期間であるが、カウンターパートである本社海外事業部も、部署としてはトレーニーの段階であると肝に銘じて、ノウハウ・人材の整備を、同時に且つ継続して推進する必要があることは無論である。トレーニーをきちんと育成することこそが、将来、現地での事業運営にとって頼りがいのある、強力な海外要員を確保することにつながるからである。
以上