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海外ホットライン
2006.10.03 No40 グローバル化と「モノ」と「ヒト」の標準化(Standardization)の進展
去る9月9日に「日・フィリピン経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)」が署名された。EPAは二国間の経済関係全般(貿易・サービス・投資・ヒトの移動等)に亘る連携の強化とルールを取り決めたものであり、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement。「モノ」(貿易)の拡大・自由化を主な目的としており、二国間関税の低減・撤廃を中核施策として位置づける)よりもより一層包括的な協定と云える。
今回のフィリピンとのEPAで注目される内容は、「人の移動」促進の観点から日本の一部労働市場の開放が具体化したことである。対象職種は看護師と介護福祉士であり、受入予定人数枠(合計)は2年間で最大1,000人と報じられている。フィリピンでの資格に加えて日本語研修を経た後、日本の病院等で就労し、一定期間内に日本の国家試験を取得すれば、引き続き勤務できることになる。就労条件は勿論日本人と同一条件が適用される。
昔話では海辺の民が採った魚や塩を山の民の農作物と物々交換するという場面があるが、現代の貿易も基本は同じで、相手が欲しがるもの、すなわちその国で買えないモノや、極めて高価か品質が悪いモノしかないマーケットに売っていくことに変わりはない。貿易については、WTOやFTAの進展によって相当自由化、標準化してきたが、次のステップはまさに一定ルールに基づいた「ヒトの自由な移動」(労働市場の開放)となろう。
多くの日系企業が海外進出した結果、日系現地法人の事業も、現地の日系企業から調達した部品・部材によって製造した二次製品をさらに他の日系企業に販売(納入)するといった、いわば所在する場所が海外である以外は、日系企業から日系企業という、日本国内と同じ企業連携の中で事業が行われている形態がごく一般化しつつある。海外事業そのものが「国内化」していると云ってもいいだろう。海外駐在員の生活自体も、昼食は日系企業各社の駐在員が集まる「社食風」日本料理店で「豚のショウガ焼き」や「サンマの塩焼」定食を食べ、夜は駐在員仲間と「鮨屋で軽く」、といった日常が当たり前になっている地域も多い。これも国内化と云っていいであろう。
ネイティブスピーカーがキイワードになっている外国語学校を例に挙げるまでもなく、日本国内で需要を賄えない人材については職業分野を問わず、受け入れて行くのは自然の流れであろうし、現に、シンガポールといった労働人口が不足気味の国では外国人就労者を多く見かける。
ヒトの自由化が進んでいくと、最終的には「『日本人』だから優先的に・・・」という論理は通じなくなっていくだろう。モノの場合で云えば、その昔米国が国際競争力の低下や貿易赤字削減を図るべく「Buy American」(米国製品購入促進)キャンペーンを展開したことがあるが、振り返ってみると結局のところ市場(消費者)は米国製・外国製ということではなく、製品そのものの魅力(品質や価格)によって勝者を決定したわけである。
労働市場の開放については「日本国内の雇用に悪影響がある」との懸念も当然あるだろうが、その前に同じ土俵(厳然たる市場の論理)での競争に耐えられるだけの魅力ある人材の継続的育成をどうするか、が喫緊の課題ではないだろうか。。
「ヒトの自由化」がもたらす場面として、以下の二通りの将来シナリオを提示するので、そのどちらのケースになるか、想像してみたい。
(シナリオその1)
我が家は代々農家。農作業は外国人に任せているが不安はない。10年前から始めたアセアン向けの梨とぶどうの輸出が好調だ。来年からは桃も輸出したい。長男は米国の大学院に進学した。養護施設にいる老父は、外国人の養護介護士が丁寧に介護してくれて満足しているようだ。
(シナリオその2)
勤務先は日本企業相手の工業デザイン会社で、自分は総務を担当している。社長は日本の工業デザイン科の大学院を経て会社を設立して成功した人物だ。自分の学歴は大学卒だが、そんなに勉強したわけでもなく特技も資格も持っていない。英語も苦手だ。今の仕事はあまり面白くないから今年中には転職したい。転職もこれで10回目になってしまった。