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2006.11.30 No41 海外企業買収(M&A)の留意点

わが国企業で、日本国内事業の伸び悩みに直面している企業は多く、その打開策として海外市場参入による事業拡大が選択肢のひとつになっている。このような海外事業進出や事業拡大の一手段として海外企業の買収(M&A)は、もはや例外的な手法ではなくなりつつある。海外進出方法を単純化すれば、更地(Green Field)を購入して新たに製造拠点を設立するか、あるいは既存の製造会社を買収して直ちに自社製造拠点として稼動させるかという、二者択一のうちのひとつと云ってもいいだろう。


image002.jpgもちろんすべてがうまく行くわけではない。買収した海外企業が思惑通りの製造拠点としての機能を発揮し、自社の海外事業拡大に大いに貢献すればいいのだが、残念ながら思惑が外れてしまうケースが多いことも事実だ。その要因を考えてみたい。


1.「買収目的が明確でない」

これまでの経験からして挙げられる代表的な失敗の要因としては、まず「買収目的が明確でないM&A」が挙げられる。ある時、社内会議で買収を熱心に勧める営業部門担当者に対して「なぜ買収するのか?その事業戦略は?」と尋ねたところ、表面的にはもっともな理由を挙げていたが、本音のところでは「先方に買収を持ちかけられたから」という回答を受けたことがある。このような場合、社内でも真のコンセンサスが取れておらず、結局は一部門(この場合には営業部門)の独走状態にある。このような場合、社内での牽制機能を有する管理部門は、案件そのものの内容の理解を含めて案件評価(evaluation)すること自体ができない場合が大半である。当然ながら「買収」とは投資に見合った利益が全社ベースで見込まれなければ意味がないわけである。まず買収する側で統一的な案件評価を行った上で具体的な買収交渉をスタートすべきであろう。


2.「持ち込まれたM&A」

次に、「持ち込まれたM&A」が挙げられる。金融機関や証券会社の投資部門担当者から持ち込まれた「魅力的な買収企業」に飛びついてしまう。持ち込んだ方はup-front-fee(案件着手料)に加えて、さらに案件の額に応じた成功報酬を得ようとして、案件成立そのものが目的となっている。買収する側には、M&Aの手順も十分理解できなかったり、回答期限の設定等によって入念な収益見通しを自らの手で検討する余裕もないまま、結局は持ち込み先に引きずられて、お任せスタイルで買収が完了してしまう。こうして、いよいよ事業運営といっても持ち込み先が買収後の面倒を見るわけはなく、結果として買収した側の対応は後手後手に回ることになる。前項の買収目的が明確でないM&Aと同様に、もともと買収側に積極的な動機がなかったり、十分な検討ができなかったM&Aは当てが外れることが多い。


3.「買収価格査定」

買収価格の査定(算定)に余りにも熱心な企業も多い。査定手法であるDCF(Discount Cash Flow)法や修正簿価に基づく買収価格を金科玉条の如くに思いこんで相手方と交渉してもなかなかうまくは行かない。算定価格はあくまでも参考情報であり、最終価格は両者の思惑と交渉次第である。この場合、買収側としては事業採算を十分吟味し、予め上限価格目処を設定した上で相手方と交渉することが肝要である。


image004.jpg買収自体は別に特殊な取引ではない。高額でオファーすれば多分買収が成立する可能性が高いであろうが、買収とはそれ自体が目的ではなく、買収後の事業経営、すなわち買収される企業の事業基盤を組み込むことによって「プラスα」の効果が挙がらなくてはならない。買収する側の戦略や論理を一方的に押しつけるのではなく、被買収先もプラスと感じることができる「win-win」の関係が本来の姿であろう。



ある国の販売代理店を長年任せていた企業経営者から「そろそろ引退したいが跡継ぎもいないから」と、日本企業に買収を持ちかけるケースがある。こういった場合は、買収成功の要因である(1)事業見通しの確実性、(2)企業文化の相互の理解、(3)先方経営陣の協力(スムーズな経営承継)といった条件が満たされていることから、買収査定監査(Due Diligence)さえしっかり行えば、買収価格面での交渉はあるとしても、多くのケースでは円満に買収が完了する。



別に買収に限ることではないが、企業と企業の関係は、数字や理論に加え、やはり最終的には人と人とのつながりであるということをもう一度見直してみるべきであろう。

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