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海外ホットライン
2007.10.15 No46 「グローバル化の進展と日本標準(ジャパン・スタンダード)の行方」について
日本から中国西域に観光旅行に出かけた観光客が、ふと見ると砂漠の向こうから日本の某企業の宅配バンが現れた。「こんな地域にも日本企業は事業展開しているのか!」とわが観光団から感嘆の声が挙がったのはもちろんです。実際に現地で宅配事業が展開されていたかというと、実のところの種明かしは、日本から輸入した廃車の宅配バンが現地で使用されていた、という次第でした。自動車に限らず、多くの日本製品が世界中に溢れている状況となってからだいぶ経ちましたが、現在も業界分野を問わず、新たな製品が続々と海外市場に参入し続けています。もはや、海外市場とは無縁の企業は皆無と言っても過言ではないでしょう。
かかる状況をグローバル化の進展と日本標準(ジャパン・スタンダード)の観点から「人、モノ、カネ、情報」に分けて見てみましょう。
1.モノ(貿易)
日本企業の海外事業は、製品の単純輸出から現地生産へのシフトが一般的となりました。さらに、国際分業体制(国内外事業拠点ネットワーク)へと進んでおり、新製品の企画開発は米国拠点で担当し、製造は日本とタイとインドネシアで分担、完成した製品を日本はじめ世界各市場に供給するといった具合です。全ての製品の開発機能と人材を一拠点に集中して開発効率の向上を図る企業もあります。
政府政策レベルでは、企業活動のグローバル化に伴って拡大する各国間の「モノ」の流れをよりスムーズにするために、関税率引き下げ・撤廃を中心的施策とする二国間の自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)が各国で積極的に推進されています。貿易などのグローバル・ルール策定等、全世界ベースの課題については貿易・通商分野の国連とも云える世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)で議論されていますが、FTA はまさに二国間が有する課題を集中的に、よりスピーデ
ィに解決することが可能になります。二国間FTA から、さらに地域を拡大したASEAN(東アジア諸国連合(*))と中国といった地域間FTA も進展しています。
2.人、カネ(広範な経済活動)
モノ(貿易)に加えて、「人、カネ」に代表される、より広範な経済活動も拡大しています。アジアを中心とした日本企業の現地駐在員数は急増の一途ですし、アジアからの留学生が日本国内で就職するケースは、ごく普通になりました。また、アジア諸国から観光客の増加は、まさに実感を持って感じられるところです。このような状況下、日本政府は従来のFTA よりもさらに広範な経済連携を標榜する、経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)によって、「人」の移動(一例として国家資格を必要とする看護士や弁護士といった技術職・専門家の受入)や、「カネ」に代表される金融・投資分野での規制緩和・撤廃や、知的財産権保護などのビジネス環境の整備を推進しています。
3.情報(制度)
DVD は日本製が一番、映画は香港か韓国、芸能エンターテイメント手法は日本がリードといった具合で、ある企業、ある業界、ある国の技術や機能・デザイン、やり方がアジア域内をリードしている場合が多く見受けられます。ところで、意外と知られていないのが、日本の制度や政策がアジア域内では大きく先行していることから、多くのアジア諸国が日本からそれらを学んでいるということです。法制度で云えば、金融・為替・投資関係の法制度はもちろんのこと、独占禁止法や製造物責任法、環境関連法制度といった分野の法整備のために、わが国の法制度や運用状況が活用されています。さらに政策立案や戦略構想の策定といった分野でも、日本のコンサルティング・ファームが各国政府機関に積極的な働きかけを行っています。なかには、構想そのものは日本が遙かに先行していたにも拘わらず、実現はアジア某国の方がずっと早く達成した、といった例は少なくありません。特に日本では解決までに難問山積となる場合が多い、道路や空港、大規模インフラ、情報通信分野で見受けられます。
「人、モノ、カネ、情報」の流れが加速する中で、これまで日本はアジア域内をリードしてきましたし、生産管理では、「カンバン方式」に代表されるように、世界の産業界をリードした手法もあります。他にも、技術や機能・デザインが業界標準として市場で認められたものも多くあります。こういった状況が、冒頭で紹介した宅配事業が「現実」のこととして自然に受け容れられるような環境となっているわけです。
さて、次に挙げられる課題しては、ジャパンブランドが確立している「モノ」から発展して、商慣習・商取引、ビジネスマナーといったいわゆるビジネスカルチャー分野での日本標準(ジャパン・スタンダード)を、将来のアジア域内標準にいかに浸透させていくかです。
もちろん、これにはさらに広い意味での各国カルチャー(文化)の相互理解、融合が前提となりますから、アジア経済圏の形成の過程で考えていく、まさに長期的課題と云えるでしょう。