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2008.03.26 No48「雛形の功罪」について

「今度、中国で現地企業と合弁会社を設立する方向で検討中なんですが、合弁契約書の雛形ありませんか?」とか、「海外駐在員が増えてきたんで、そろそろちゃんとした海外駐在員の福利厚生規程を制定したいんですが、何か適当なサンプルありませんか?」といった照会や依頼が意外と頻繁にあります。「何に使うんですか?」と尋ねると、「いや、ちょっと参考にしようと思って。」といった反応が大半です。照会の内容自体は各社にとって重要な事項である場合が多く、「ちょっと雛形を参考にして・・・」といったお気楽な内容ではないと思われるのですが、それでも相も変わらず「ちょっと参考にしたいんで『雛形』を」という依頼が後を絶ちません。今回は「雛形の功罪」について、合弁契約書と海外駐在員複利厚生規程を例に挙げて考えてみます。

1.そもそも
「ちょっと参考にする」ために「雛形」を入手することによって、いわば「温故知新」と、これまでの契約の一つの精髄をみることができ、全体の形式や構成についての参考になることは間違いありません。この点が雛形の「功」の部分と云えますが、それ以上の存在にはなりません。というのは、課題となる個別具体的案件は当然ながら個別に異なるわけですから、それなりの判断に基づいて修正していく必要があります。
ところが、雛形を参考にしようとされる照会企業の方々の殆どは、参考にするのみに留まらず、雛形をベースに修正、加筆を加えて最終的な契約書や規程にしようと目論んでいます。この結果、「雛形」を前にした途端、本来自らが判断し、交渉していくべき事項について、いわば「思考停止」を起こしてしまい、雛形に引きずられてしまうことが往々にしてあります。つまり、「雛形にこう記載してあったから・・・」といったものです。実は、これが後日のトラブルにつながることになります。これが雛形の「罪」のポイントです。例えば、各種契約の雛形の場合には自社で作成した原案に対しては、契約交渉の相手方から修正・削除の要求が出るでしょうし、さらに交渉を経て修正が重ねられて行くと、元の雛形とは似て非なる内容にまで至ることもあります。さて、こうなるともはや雛形とは言えません。このような契約は、雛形にツギハギされた修正箇所が加わって統一性の無い内容になっている懸念があります。また、企業側にとって、どの条項が重要で、どこにどのようなリスクが内包されているかの判断も十分できているとは思われません。雛形が「ちょっと参考に」に留まらず、逆に雛形に振り回されてしまった場合のリスクは図り知れません。
雛形の功罪の「功」の部分である単なる「参考」については大いに参考としていただき、具体的な課題(交渉や策定)については、自らの頭で考え、リスクを取りつつ、さらに外部コンサルタント・アドバイザーといった専門家のサポートを受けるようにしていただきたいものです。ちなみに、アドバイザーの多くは、最初に雛形を要求される案件こそがリスク度が高い案件であることを、その経験から学んでいます。

2.「合弁契約書」(Shareholders Agreement)の雛形(事例その1)
これまでも合弁企業のリスクについては述べてきましたが、合弁リスクの根本は出資比率に応じて儲けとリスクを案分するという形態にあります。販売拠点にしろ生産拠点にしろ、重要な役割を担う海外拠点を合弁形態としていいのかどうかの判断が求められます。
さて合弁企業を設立する場合には、合弁契約書を締結することになります。雛形を参考にするにしても、最も重大・重要な、合弁会社への経営参画をどうするかは自社で判断し、合弁相手と交渉しなければなりません。経営を主導すべく出資比率でマジョリティを取るか、あるいは合弁相手方に経営主導権は任せて、過度なリスクと負担を回避するのかどうかをまず決めなければなりません。それから多岐にわたる交渉とビジネス判断が求められます。ところが日本企業の場合には、往々にして、儲けとリスクの
分担(すなわち権利と義務の分担)についての交渉を終える前に、あるいは交渉の冒頭から、「出資比率は70%:30%で行きたい」と切り出してしまいます。これでは順序がまるであべこべです。先程の雛形のケースと同様です。
契約条項は、十分な交渉と個々のビジネス判断を背景にした合意の結果、ようやくまとまるものです。下手に雛形にとらわれないように注意しましょう。

3.「海外駐在員複利厚生規程」の雛形(事例その2)
「海外駐在員から海外勤務の条件(給与や住宅手当、帰国休暇制度等)を良くしてもらいたいと度々要求されているが、果たして要求レベルが他社に比べても妥当なのかどうか分からない。対応に苦慮している」といった照会で、雛形の依頼も多くあります。
中には、外部採用した社員が持参した他社の規程をそのまま使っているといった事例もあります。これでは社内で規程そのものの妥当性チェックもなされていないわけですから、海外駐在員に対して自信を持って「標準以上の厚遇条件だ」とは言えないわけで、海外駐在員の納得は得られず、就労意欲にも響いてくる懸念もあります。ここでも、豊富な経験を持つ第三者の外部アドバイザーを活用して、透明性、納得性のある規程を策定してもらいたいものです。

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