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2009.06.24 No.50 中国─変わる投資環境の虚と実(上)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際事業本部 海外アドバイザリー事業部

 この数年、中国の投資環境が大きく変化している。
 以前は、「人件費や土地代などコストが安い」「市場が大きい」「外資優遇がある」というのが中国の投資環境の魅力に挙げられていたが、今やコストが高くなり、市場での競争は激しく、外資優遇はほとんど撤廃された。加えて、政策や法律による新たな規制が次々に設けられている。

 中国への投資を検討していた企業の中には、投資を見合わせ、他の国へ変更する企業も増えている。こうした企業の多くは、中国の投資環境に対して、特に政策や法律が不安定であることに疑問を抱いているように思われる。

 そこで、最近の進出企業に影響を与えている主な政策・法律を2回に分けて取り上げ、その実態について述べてみたい。

1. 貿易摩擦深刻化等で輸出規制

 中国では、2006年から2007年にかけて、4,000品目以上の輸出品に対して増値税還付率の引き下げと加工貿易禁止・制限の措置がとられた。
 こうした措置は以前からあったが、多くの企業が輸出、加工貿易に参入し、資源・エネルギー不足や環境汚染、また米欧との貿易摩擦が深刻化する中で、対象品目が拡大されたものである。

 増値税は、日本の消費税と同じ付加価値税の一種で、企業が製品を輸出すると、原材料を購入した際に支払った増値税が還付される。
 しかし中国では、企業の不正な還付申告が横行し、財源不足をきたしたなどの理由で、以前から一部の品目を除いて還付額を計算する比率が税率の17%より低く設定され、原材料購入時に支払った増値税の一部しか還付されていなかった。その還付率が更に引き下げられたのである。
 さらに、加工の過程で大量のエネルギーを消費する製品や環境汚染をもたらす製品は還付自体が取り消され、技術レベルや付加価値が低い製品は還付率が一部引き下げられた。還付率が1%引き下げられると、輸出価格コストは1%アップとなり、それだけ企業収益を圧迫することになる。

 これらに加え、還付率が引き下げられた品目については、加工貿易でも禁止・制限の対象とされた。
 加工貿易とは、輸入原材料を製品に加工して輸出する貿易形態であり、一般貿易で賦課される輸入関税および増値税が免除される。しかし、禁止の対象とされた品目については、これが適用されないためビジネスとして成り立たなくなり、また、制限の対象とされた品目については、関税こそ課されないものの保証金が徴収されるため、企業の資金繰りを圧迫するようになった。

2. 日系企業の場合は大きな影響なし

 これらの措置が発表されたときは、広範な企業から大反響が巻き起こったが、結果として日系企業にはほとんど影響がなかった。日系企業の場合、大量のエネルギーを消費する製品や環境汚染をもたらす製品はもとより、技術レベルや付加価値が低い製品を手がけるところは少ない。また、そうした製品を生産していた企業も、短期間のうちに加工度を上げ、あるいは国内販売に切り替えることで、影響を回避している。

 影響を受けたのは、主に中国の内資企業であり、香港系、台湾系、韓国系の企業である。その多くは、大量のワーカーと旧い設備を使い、安価な製品を加工していた。中国政府は、こうした時代遅れの好ましくない企業を淘汰し、産業構造を高度化することをねらったのである。
 日本企業は、これに過剰反応をしたように思われる。規制の内容をよく見れば、自社への影響が小さいことも、対応策があることも分かるはずである。ただ、中国政府の意図を理解すれば、事業のより一層の高付加価値化を図ることが必要になっているのは確かだ。

 なお、昨年秋以降の世界的な金融危機の中で、輸出規制が緩和されている。増値税還付が取り消された品目と加工貿易が禁止された品目はそのままだが、増値税還付率が一部引き下げられた品目はほとんどが以前の還付率に戻され、加工貿易が制限された品目は制限が撤廃されている。
 ただし、これはあくまで暫定的な措置であり、輸出が回復すれば再び規制が強化されると見ておくべきだろう。

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