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海外ホットライン

2009.07.30 No.51 中国−変わる投資環境の虚と実(下)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際事業本部 海外アドバイザリー事業部

1.新企業所得税法の施行

 昨年から新しい企業所得税法が施行され、外資系企業の待遇は大きく変わった。以前は、広範な外資系企業が低減税率や期間減免などの優遇を享受していたが、新税法では優遇の内容・対象が大幅に制限された。

例えば、高新技術企業に対しては、以前と同じく15%の低減税率が適用されるが、それには「核となる自主知的財産権を有すること」が条件の一つとされた。日系企業の場合、親会社の知的財産権を借用している企業は多いが、自ら知的財産権を所有している企業はほとんどない。このため、高新技術企業に認定される企業は、ごく一部にとどまると思われた。

 しかし、その後に公布された高新技術企業の認定規則で、「核となる自主知的財産権」は自主開発したものだけでなく、譲渡や5年以上の独占的実施許諾を通じて取得したものも含むとされ、多くの企業が認定のチャンスを得た。高新技術企業は、既に内資・外資企業合計で約2万社が認定されたと伝えられているが、その中には日系企業もかなり含まれていると見られる。

 また、新税法では規定されていないが、その後の政府通達で、ソフトウェア開発企業と半導体生産企業も、従来どおり期間減免などの優遇が適用されることになった。更に、税法とは別に、多くの地方で広範な外資系企業を対象に、財政補助による税額還付の優遇が実施されている。
 新税法は、早くから内資企業と外資系企業の待遇の一本化を趣旨として制定することが公表されていた。外資系企業からすると、旧税法のときより優遇が減少し、その対象企業も限られたが、中国のめざましい経済発展や外資の進出を見れば、これは当然と言える。ただ、優遇が全くなくなった訳ではなく、現在の経済政策に沿った内容に修正され、その一方では、税率が以前の33%から25%に引き下げられた。また、旧税法で優遇が適用されていた企業に対しては、2012年まで延長適用するという経過措置も採られている。これらの点についても、冷静に見るべきだろう。

2.労働契約法の施行

 労働契約法も昨年から新たに施行された。この法律は、労働者の権利と雇用者の義務を過度に定めたものとして、企業側から反発が上がっている。一方、労働者側からは企業に対する要求が強まり、各地で労働争議が頻発している。その原因となっているのは、特に次の規定である。

 (1)企業が従業員を採用した日から1ヵ月を超えても書面の労働契約を締結しない場合、締結するまで
   毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
 (2)企業と従業員が連続2回、期限のある労働契約を締結した場合、従業員の申し出があれば、その
   次は無期限の労働契約を締結しなければならない。
 (3)企業が「従業員の切実な利益に直接関わる規則」等を制定、改定する場合、全従業員との討議、
   案・意見の提出、労働組合または従業員代表との協議を経て、確定しなければならない。

 ただし、その後に公布された実施細則や裁判所の判断で、これらの規定は現実的に運用されつつある。

上記(1)は、従業員が故意に労働契約の締結を拒否した場合や企業が誠実に労働契約を履行していた場合には、適用されない。(2)は、企業がその従業員との労働契約の更新を拒否できるのは1回目だけか2回目までかが不明だったが、2回目まで拒否できることが明らかになっている。(3)についても、規定の手続きを経ずに制定、改定した規則であっても、法律や国の政策に違反しておらず、かつ従業員に通知していれば、企業の従業員管理の根拠として認めるという裁判所の判断が示されている。

 労働契約法が公布された当初は、労働契約法が施行されると経営が立ち行かなくなるという企業の意見が多かったが、実際にそうなった企業はほとんどない。中国の法律は往々にして理念が先行し、現実から掛け離れていると言われるが、その運用は現実的で、関係者が受け入れられるように配慮がなされている。こうした点も、理解されてしかるべきだろう。

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