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2009.12.11 No.53 中国の外貨管理事情 貿易決済を巡り厳格化しつつも整備が進む中国の外貨管理
中国における貿易決済の管理を巡っては、2008年7月に一部の貿易決済に対して当局への登記を義務付けて以来、関連規定がたびたび変更されてきましたが、現行の規定は2009年9月1日から施行されているもので、当初の外貨管理から大幅に緩和された内容に落ち着いています。
2008年7月当初の規制は、輸出の前受と輸入の延払に対して「外債登記」(「企業貨物貿易項目下外債登記」)の義務付けと決済可能額に厳しい上限を設けたものです。その背景には、2005年7月の人民元対米ドル相場の切り上げ以降、人民元高期待や米中金利差の拡大から、為替差益や利ザヤを当てにしたホットマネーが貿易取引を装って海外から流入したことがあり、当局はこれが投資過熱やインフレの誘因になったと見ています。
中国人民銀行(中央銀行)や外貨管理局等は、2008年に行ったホットマネーの流入に関する実態調査、で、ホットマネーの流入源には主として、(1)経常取引を装った外貨送金、(2)対中直接投資、(3)国外借入の3ルートがあるとし、経常取引の送金については、輸出前受と偽って代金取得後に契約を破棄したり輸入決済を引き延ばすことにより、資金を投機に回す行為が散見されたと指摘しています。
然しながら、2008年9月以降は、リーマン・ショックに伴うグローバル金融危機が広がる中、それまで流入したホットマネーが流出することによる人民元相場や経済への影響が懸念され、当局は一転してホットマネーの流出対策に乗り出しました。具体的には、2008年11月より輸入の前払と輸出のユーザンス回収に対し、「対外債権登記」(「企業貨物貿易項目下対外債権登記」)の義務付けと決済可能額を制限する制度を導入しました。
その後、先進国の景気回復の遅れを受け、中国の貿易も大幅に落ち込んだため、貿易促進の一環として規制は段階的に緩和され、現状では、上記の登記を要する決済の限度額は大幅に拡大されています。また、限度額を超える場合でも、実需に基づき業界として合理的な水準の決済額であれば、当局は実情を勘案した比較的柔軟な対応を取っているようです。

中国は1996年11月のIMF8条国入りに伴い、経常取引について、外貨管理は「原則自由」、即ち、「実需原則(実需の裏付けが必要)の下で自由化(当局の事前許可が不要)」されたにも拘わらず、昨今貿易決済に対して、上述の様な管理方法を導入していることに対し、規定違反ではないかと疑問視する向きもあります。
しかし、当局は一連の管理強化の主旨が、貿易取引と偽ったホットマネーの流出入を防止するためにクロスボーダー資金の流れをモニターすることにあり、実需に基づく資金流出入にまで制限を加え、企業の経営活動に支障を来すことを望むものではないとしています。また、新たな管理方法の導入により、企業、銀行、外貨管理局、税関の間でオンライン上の情報交換を可能とする全国統一システムの構築が図られ、当局の計数管理の正確性と企業の対外決済手続きの利便性が着実に向上している点も見逃せません。
中国は、今後、経常取引に加え資本取引における自由化を目指して外貨管理の整備を一段と進めていくものと思われ、その過程において、外部環境の急激な変化に際しては今回のように資金の流れに対する管理が厳格化されることも予想されます。しかし、こうした当局の対応は自由化の後戻りではなく、当局の外貨管理の合理化と企業の決済活動の効率化の進展によって、自由化に向かって前進していくものと期待したいところです。