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2010.02.10 No.54 インド企業との合弁交渉における注意点
日本企業に対して、中国の次に開拓すべきマーケットはどこかと問えば、「インド」と回答される企業が非常に多いと思います。
従来その潜在力のみが評価され、「いずれはインドも考えないと」という長期的検討対象に留まる傾向がありました。しかし、ここへきて具体的にインド進出を進める企業が増えて来ているようです。
日本企業にとって、「インドは大変だ」という先入観があります。特に、インド企業との合弁交渉となると、非常に負担を感じる傾向があります。その一方、日本企業が単独でインド進出を果たすことは、相当な物的コストと人的負担が掛かることも判明しています。インド進出の目的が、インドの国内市場への売り込みとなると、インド市場向け製品仕様開発、販売ルート開拓、広告宣伝、取引先への与信と代金回収などが必須の検討項目となり、再度、合弁事業のメリットが浮上してきます。インドは、他のアジア諸国と比較すると、圧倒的に民間企業の歴史も長く、合弁相手先の候補も非常に豊富です。
そこで、今回はインド企業との合弁交渉について、そのポイントをご説明したいと思います。
(1)交渉の方法
インド側は企業トップと弁護士が交渉の当事者ですが、日系企業の交渉の担い手は現場の実務家の場合が多く、ここに大きな相違点があります。具体的な契約交渉となると、合弁交渉に先立つトップ間の友好的な話し合いとは様変わりして、極めて厳しい条件を次々とつきつけられる事例が多く見られます。これは、インド側には顧問弁護士が交渉に入っているので当たり前のことなのです。一方で、日本側は、実務家が日常業務を抱えながら、特に契約書の検討ともなると、英語とインド法という二重の壁が立ちはだかり、また社内報告や調整もこなしていく必要があり、大きな負担を強いられます。この点、日本側は交渉のための社内体制を予め整備しておく必要があります。
インド企業との間で、実務レベルでの条件を詰めた後に、トップ間の会談でインド側トップから新提案がなされ日本側トップを戸惑わせる事も多くあります。インド側は、本当の交渉はトップ間でと思っている事も多いのです。実務レベルで決着済みのポイントを蒸し返された場合は、明確にNOと言う必要があります。
(2)合弁契約の主要検討項目について
<1>経営権
具体的には株主出資比率と役員会の構成です。
出資比率については、日本側がマジョリティであっても、インド側が25%以上であれば、インド側が拒否権を持つことになり、特別決議事項は日本側だけでは決められません。インド側はマイノリティの場合であっても経営への関与が最大関心事なので、Reserved Matters(日印双方の賛成を条件とする事項)を最大限にすべく要求してきます。従って、日本側がマジョリティの場合は、このReserved Mattersを如何に制限するかが交渉のポイントになります(但し、インド会社法で25%超の株主に拒否権が認められている特別決議事項の項目は削除できません)。役員会の構成は、日本側がマジョリティの場合は、例えば役員3人とするとうち2人が日本側、あるいは5人のうち3人が日本側というのが理想です。これ以上になると例え日本側がマジョリティをとっても実際に出席するのが大変です。株主総会は現地駐在の邦人スタッフなどに委任状を託す事ができますが、役員会はそういう訳には行きません。また例え、日本側がマジョリティであっても上記のReserved Mattersを多く規定していると日本側にとって経営の自由度が狭くなります。
<2>競合の問題
インドでの合弁相手先が、ビジネス実績が大きくかつ多岐にわたる可能性もあります。この場合、合弁契約書上の競合に関する規定は重要な意味を持ちます。インド国内において、日本側本社から直接輸出された製品と合弁企業の製品との競合をどうするか、インド国外における同種の製品の競合をどうするか、また、本合弁企業とは別に、日本側が、独資(あるいは他の合弁契約)によって新たに現法を起業することが可能となるよう予め合意を取得しておくかどうか、なども決めておく必要があります。一方で、本合弁企業の製品と競合する製品をインド側パートナーのグループ企業などで取り扱っているケースも有りうるので、この競合をどう考えるかも検討を要します。
(3)定款や技術支援契約との関連
合弁契約の条件に従って定款の記載内容も規定する必要があります。合弁契約書に比べ定款自体は定型的な条項の羅列という事で、あまり注意を払われない危険性があります。しかし、合弁契約書の条件と定款の条項に食い違いが無いかどうかチェックしておくことが重要です。また、通常、合弁プロジェクトには技術支援が伴います。合弁契約調印に先立って、この技術支援契約の条件も決めておく必要があります。尚、ロイヤリティやブランド使用料は、インド政府の許可無く海外に送金できる上限が定められていましたが、最近これが緩和されました(2009年12月に発行された政府通達−プレスノートNo.8 2009)。また、源泉税・サービス税などの税金をどちらが負担するかなどについてもあらかじめ明確化しておく必要があります。