Englishサイトマップ
お問い合わせアクセスマップ
国際通貨研究所
ホーム > 国際通貨研究所 国際金融トピックス > 国際通貨研究所 国際金融トピックス No.141

国際通貨研究所 国際金融トピックス

2007.07.23 国際通貨研究所 国際金融トピックス No.141

ベトナム経済の高成長とインフラ面でのボトルネック
国際通貨研究所 経済調査部 研究員  上野 義之

ベトナム経済は、東アジアの中で中国に次ぐ高い経済成長率で拡大を続けている。安価な労働力を背景に、中国に替わる投資先として海外から多くの直接投資を引き付けてきた。その一方で、電力不足に代表されるようにインフラ整備の遅れが問題となっている。また、その遅れを解消するための莫大な投資資金をどのように調達するかという課題にも直面している。

【好調な経済が続く中でインフラ整備の遅れが懸案に】
IMF(国際通貨基金)はこのほど、最新の「World Economic Outlook」(注1)を発表した。それによると、ベトナムの2007年の経済成長率は8.0%で推移すると予測している(図1)。これは、中国、インドに次ぐ高い成長率となっており、引き続き高い経済成長が続くものと思われる。

図1−ベトナムの経済成長率
070720_1.jpg
しかしながら、その一方で、ベトナムでは経済成長の根幹を支える電力や交通道路網等のインフラ整備の遅れ、ボトルネックが懸念されている。5月30日、ベトナム計画投資大臣出席のもと、各国政府の代表やベトナムに投資する外国企業の代表を集めたベトナム・ビジネス・フォーラムが首都ハノイで開催された。その中で、投資環境整備の課題の一つとして、インフラ整備の遅れが指摘され、解消に向けた政府の対応が求められた。ベトナムの高成長が海外からの旺盛な直接投資に支えられていることは言うまでもない(図2)。新規にベトナム進出を検討している外国企業

にとって、電力の安定供給など当該国のインフラ整備の状況は、海外事業展開を決定するにあたっての重要なファクターの一つである。この点、安価な労働力を背景に海外から多くの直接投資を引き付けてきたベトナムにとって、電力不足に代表されるようにインフラ整備の遅れは深刻な問題である。

図2−外国からの投資額
070720_2.jpg
【インフラ整備の遅れと必要とされる投資資金】
特に、電力不足は深刻である。ハノイを中心にベトナム北部地域では、3月中旬から4月にかけて計画停電が実施された。近年、このような計画停電が行われており、また、発電所での故障・障害が慢性的に起きている。北部地域における4月の計画停電や2005年5月に発生した大規模な停電に象徴されるように、ベトナム政府にとってこれらへの対応が喫緊の課題となっている。

電力不足の直接の原因は、好調な経済発展を背景とした電力需要の急伸によるものである(図3)。2000年以降の電力需要の伸びは年平均16%程度であり、高水準で推移してきている。成長産業での電力消費量の増大、そして、家電製品の普及による電力需要の大幅な伸びが、拍車をかけている。加えて、ベトナムは、発電量全体に占める水力発電への依存度が高い。そのため、降水量の多寡によっては、電力供給が不安定になるという事情もある。

ベトナム政府は、昨年6月に「2006−2010年社会・経済開発5ヵ年計画」(注2)を発表した。これによると、2006−2010年のGDP(国内総生産)成長率目標を7.5〜8.0%とし、2010年のGDPを2000年の2.1倍とすることを目指している。この国家目標達成に向けて、2006−2010年の社会・経済インフラ整備への投資総額は2,200兆ドン(1,382億ドル)、うち産業・建設分野は44.5%の979兆ドン(615億ドル)を見込んでいる。ちなみに、2001−2005年の投資総額は1,098兆ドン(690億ドル)、うち産業・建設分野は44.3%の486兆ドン(305億ドル)であった(注3)。したがって、投資総額に占める産業・建設分野の割合には大きな変化は見られないものの、投資総額そして産業・建設分野への投資金額はともに実に前5ヵ年の倍に膨らんでいる。今後も益々大幅な増加が見込まれる電力需要やインフラ整備の拡大に向けて、このような莫大な投資資金をどのように調達していくかが大きな課題となっている。


【インフラ整備の遅れの解消に向けた取り組み】
この莫大な投資資金の調達手段として、一つは各国政府からのODA、国際機関からの資金援助を利用した調達方法があろう。実際に、電力関連のインフラ整備分野を見ると、2001年から2006年までの間に火力発電を中心に8件1,481億円(案件ベース)の円借款(有償資金協力)が実施されている。最近の案件として、2007年3月に北部地域の発電能力増強と安定的な電力供給を目的にタインホア省(ハノイ市南部)のギソン火力発電所建設計画に約209億円の円借款が実施されている。今後の電力需要の伸びを考えると、引き続きこのような資金調達や事業計画が増えるものと予測される。

二つ目は、債券発行(国債発行)を通じた資金調達も重要な手段であろう。この点、現在のベトナム債券市場は未発達であり多くの問題を抱えているが(注4)、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)(注5)の考えに沿った債券市場の振興・整備を一気に加速させる絶好の機会かもしれない。昨今、ベトナム株式市場の急成長が世界中の投資家から注目を浴びている。その一方で、未発達な債券市場の現状を鑑みると、ABMIの考えに基づいた債券市場の振興・整備は、同国の資本市場の安全性や効率性を高めるのに資するものと思われる。特に、債券市場の整備・振興ひいては資本市場の強化という観点も含め、資金調達の一つの手段として、債券発行を通じて中長期的な資金需要に対し民間貯蓄を結び付け、有効活用していくことが大切であろう。持続的な経済成長に向け、ベトナムの今後の取り組みに注目したい。                  以上
図3−ベトナムの発電量推移(1971〜2004年)
070720_3.jpg
本件レポートは信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、その正確性、完全性をいかなる意味においても保証するものではありません。また特定の取引の勧誘を目的としたものでもありません。本件レポートの意見、判断の記述は現時点における執筆責任者限りの責任に基づくものです。本件レポートの提供する情報の利用に関しては、利用者の責任においてのみ判断願います。また本件レポートは著作物であり、著作権法によって保護されております。全文、また一部を掲載、引用する場合は、出所をご明記願います。

(注1):World Economic Outlook, IMF, April 2007
(注2):The Five-year Socio-Economic Development Plan 2006-2010, The Socialist Republic of Vietnam
(注3): IMF(IFS)の2006年3月の為替レート1$(米ドル)=15,914VND(ドン)をもとに計算
(注4):過去数年、本邦財務省により調査・技術協力が実施されている。詳細な内容については
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/frame.htmlの「委託調査・研究会」をご参照願いたい
(注5):http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/asia_initiative.htm(財務省ホームページ)

(注)

本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。

国際通貨研究所のホームページ
バックナンバー一覧はこちら