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眞野輝彦コラム

2006.03.01 日本の貯蓄率下落と金融政策

―国内外の貯蓄不足―

 日銀は2月下旬、バブル崩壊不況対策として採られた超低金利が家計部門の利子収入を13年間で304兆円圧縮したとの試算を発表した。日本のGDPの60%に達する金額だが、消費者物価がマイナスであることを考慮すれば、家計に実質的な負担がかかったわけではない。しかし日本の貯蓄率が急速に低下する一方で、ゼロ金利が続いているため、貯蓄の運用がリスクのある株式や金利の高い外国通貨、外貨建証券などにシフトしていることは間違いない(前回コラム参照)。

 経常収支の黒字に加え、日本の株高で外国資金が日本に流入しているにも拘らず、為替相場が115〜118円前後で推移していることは、対外黒字総額に見合う円資金が、外国に流出していることを示している。外貨運用の増加は、日本の貯蓄が自国での運用拒否であり、日本を見放した貯蓄の海外逃避とも言えよう。

114117326872227.jpg この流出の最大の受け手は、もともと貯蓄嫌いな米国である。米国の貯蓄率は昨年来マイナス、すなわち所得以上の過剰消費状態になっている(右図参照)。貯蓄が無くなれば、投資も消費も縮小するため、外国の貯蓄を借りざるを得ない。このために貿易収支の赤字拡大にも拘わらず米国は、「強いドルの旗印」を下ろすことが出来ないのである。

 貯蓄が不足しているのは米国だけではない。中国、インドなどの発展途上国は、戦後の日本がそうであったように、基本的に貯蓄不足状態なのである。

 日本の景気回復、資金需要拡大となれば、「国内と国外」と「官と民」の間の貯蓄争奪戦が始まる。米国が外国の貯金が借りられている間は良いが、ひとたび流出が始まると、金利の上昇、急速なドル安を招くことになる。ドル相場の下落は、米ドル資産の目減り、すなわち日本の貯蓄の目減りを意味する。テロのリスクを考えれば、資産運用の分散化は必要であり、その意味で外貨運用も結構なのだが、為替リスクの存在を充分再認識しておく必要がある。因みに、ひと月1円米ドル相場が下落すると、年率約10%のロスとなり、とても内外金利差では埋めきれないのである。

(注)

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