眞野輝彦コラム
2006.04.03 米国経常収支赤字問題
いまワシントンで注目されているテーマは、米国の対外収支問題である。背景には二つの要因がある。
第一は、昨年の米国の経常収支赤字は過去最大の8,049億ドルと史上最高を記録したことである。最大の貿易赤字国である中国に、人民元引上げを含めた圧力がかかるのは当然である。中国側もこのことへの対策として、胡錦濤主席の訪米時に航空機購入などの手土産持参が予想されるが、一過性的な対策では基本的な中国黒字圧縮に繋がるわけではない。またこのところ人民元の対ドル相場の切り上げ速度を若干速めているが、それとて昨年2%切り上げ以降の切り上げ率は約1%であり、この程度の為替相場調整では、黒字圧縮効果は期待できない。国内の雇用問題を抱える中国は、これ以上急速な人民元切り上げに踏み切るとは思えない。そうでなくとも所得格差の拡大から、6万件を超えるとも言われる暴動が報告されているのである。
第二は、米国企業の海外子会社所得の本国還流に関する1年限りの減税処置に反応し、昨年1年間を通じて2,166億ドルの海外所得が還流されたことである。経常赤字の約27%に達する金額であり、米国貿易赤字のファイナンスに貢献し、当然、その分為替相場をドル高に押し上げていたのである。減税適用期間の終了により今年はその還流フローが通常ベースに戻る。因みに、2004年は359億ドル、過去最高記録でも1997年の506億ドルである。
経常黒字問題は日本にとっても他山の石ではない。注目されるのは日本の例外的な超緩和政策解除の影響である。既に長期金利はじりじり上昇している。超緩和政策は日本国内のみならず、世界中に安い流動性を供給していた。ゼロ金利の円資金を調達し、高金利の外国通貨建の運用が累積されているのである。円金利の上昇が予想されれば、当然その巻き戻しが行われる。このところ為替相場の毎日のブレが大きくなっているのはそのことが始まっている証拠である。前回米ドル相場が不安定になった時の、経常赤字のGDP比率は3.5%程度であったが、昨年末は既に7%に達している事を再確認し、対応策を講じておくことが肝要である。
(注)
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