ホーム > 眞野輝彦コラム > 「為替相場を動かす要因」 ―経常収支・地政学的リスク・金利―
眞野輝彦コラム
2006.05.22 「為替相場を動かす要因」 ―経常収支・地政学的リスク・金利―
このところ為替相場の一日の変動幅が1円以上動くなど、Volatilityが高まっている。その原因は、下記三つの為替相場の決定要因の綱引き状況の変化にある。
第一は、為替決定の基本的要素である米国の経常赤字の大きさが、改めて米ドル下落のリスク要因として再認識されていることである。Bush大統領宛の経済諮問委員会年次報告でもこのことが指摘されている。因みに、Plaza合意前後の米国経常赤字は、対GDP比3.5%であったが、最近は7%とほぼ2倍に拡大しているのである。
第二に、地政学的リスクである。一方で、米国が唯一の超大国であることが、GDP比7%の赤字を可能にしているのだが、他方では経常赤字が、政治要因で引上げられているダムの高さを越えると、貯められている水量が大きいだけに、米ドル相場下落は大幅にならざるを得ないことになるとの認識が浸透している。
第三は、日米欧の金利差である。米国の金利はそろそろ頭打ちであり、他方日欧の金利はこれから上昇に向かうとの予想が、米ドル安の一要因となっている。しかしFRBが物価動向を睨み16回目の引き上げを実施したこと、日銀が19日の金融決定会議でゼロ金利政策を維持したことから、数ヶ月先はともかく、当面の金利差は維持されるとの見方が出てきている。3月9日の量的緩和政策解除後の日米10年もの国債金利水準は、0.5%ほど上昇しているが、金利差はむしろ拡大ぎみである。
米国としては格差縮小による米国への資金流入減少による米ドルの急落を避けたいところであり、金利引き上げは国内景気と資金流入状況との両睨みになっている。国内景気に陰りがでると、この両睨政策に齟齬が出てくることになる。
忘れてはならないことは、金利差の背後にはインフレ格差があることである。インフレが高い国の為替相場には、その格差に対応した下押し圧力がかかる。インフレによるコスト上昇が、対外競争力を劣化させるからである。為替相場には関係国の相対比較が反映される。為替相場の安定は望ましいが、各国の経済要因に格差がある限り、為替相場は調整されて当然なのである。
![]() |
眞野 輝彦 (まの てるひこ) | ||||||||||||||||
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事 | |||||||||||||||||
| |||||||||||||||||
(注)
本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。
