ホーム > 眞野輝彦コラム > 「法とモラル」 ―金融商品取引法の成立―
眞野輝彦コラム
2006.06.21 「法とモラル」 ―金融商品取引法の成立―
インサイダー取引が世間の耳目を集める中で金融商品取引法が6月7日に成立した。
この法律は、旧証券取引法を含め、個別の金融商品に関する法律を一本化し、同時に遅れがちであった投資家の保護を目的とするものである。この法律が成立したこの機会に二つの問題を提起したい。
第一は、折角この法律が成立したにも拘わらず、その施行時期が来年夏頃とされていることである。問題になっている一連の事件は、環境変化と法体系の隙間を縫うかたちで発生している。それを防止するための新法である。なぜ今すぐ実施できないのか理解に苦しむ。直ぐに実施できない何か特別な事情が裏にあるのではと疑いたくなるのは筆者だけであろうか。
第二は、国際環境の変化が極めて速く、如何に立法を急ぎ、即刻施行されたとしても、どうしても現実の世界との間にはギャップが生まれる。それを埋めるのが市場参加者のモラルである。諺にもあるとおり「法律はあくまで最低のモラル」なのである。
英国ではこの種の問題は関係者の自主規制で行われている。法的拘束力はないが、業界の自覚と厳しい掟で違反者は少ない。このことが小さい政府を実現させる必要条件なのである。
国境を越える証券取引所の合併・統合が行われる時代である。使い勝手の良い東京市場を形成することと同時に、市場参加者のモラルを引き上げることが、わが国の信認を回復させる唯一の道である。そして法律の整備状況もさることながら、国民一人ひとりのモラル水準が国の品格を決めることを忘れてはならない。
(注)
本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。