眞野輝彦コラム
2006.07.21 「ゼロ金利からの離脱」
日本銀行は7月13〜14日の両日、金融政策決定会合を開き、政策誘導金利をゼロから0.25%への引き上げを決定した。この意味と注意点を述べたい。
今回の決定で2001年3月から5年4カ月続いていたゼロ金利が終了し、日本の金融政策は、金利と資金量の調整という二つの手段を取り戻した。金融危機を回避するため、緊急避難的な状態であった金融市場がやっと正常化することになる。
第一の注意点は、巨大な借金を抱え、利上げが追加負担となる政府は、今回は正面きって反対はしなかった。しかし今後の再引上げのタイミングをめぐり、政府と日本銀行の間に駆け引きがあることを見逃してはならない。
第二に、企業の設備投資資金は、減価償却と利益で賄える状況であり、小幅引き上げの影響は少ない。「中小企業は大変」との意見もあるが、将来性のある企業には金融機関が前向きであり、資金調達の心配はない。特色も競争力も、また子供も後を継がない中小企業の問題は、金利問題というより、構造改革の課題である。
家計部門は、住宅ローンの金利負担が2兆円増えるが、預金金利が6兆円増加し、差し引き4兆円のプラスとなり、むしろ消費への良い影響が期待できる。
第三は、資金の海外流出と円安である。米国は既に17回金利を引き上げ、欧州も引上げが続いている。背後に、サミットでも取り上げられた、原油高騰がある。北朝鮮のミサイル発射、中東、イランなど地政学的リスクが原油高騰に拍車をかける。
福井総裁は引き上げ後の記者会見で「連続利上げを意図していることはない」と発言した。米欧との金利格差は拡大し、為替相場は円安に振れている。原油価格の上昇は日本から産油国への所得移転だが、円安は移転額を拡大させる。直近の消費者物価は0.6%である。預金者は預金金利0.1〜2%との差額の購買力を失い、いわば三重苦の状況になる。引き上げ幅は0.5%であるべきであった。金融政策の目的は、国民の豊かさの実現にある。国際情勢の変化に対応しつつ、消費者優先の金融政策の実施を望みたい。そのことが内需主導の持続的成長に繋がるからである。
(注)
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