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眞野輝彦コラム
2006.08.09 「大砲とバターのバランス」 ―為替相場の決定要因の変化―
このところ円相場が軟調に推移している。円安は原油高の国民経済への悪影響を加速させる。因みに、輸入物価指数は恒常的に二桁上昇し、交易条件はこの1年で約10ポイント悪化している。日本の経常黒字が続いているにも拘わらず、なぜ円安になるのか、この機会に国民経済の発展段階に従い為替相場の決定要素が変化することを整理しておきたい。
第一の決定要因は、経常勘定の推移であることはいうまでもない。資本勘定の自由化が進んでいない国民経済では経常勘定の変動が為替相場を決定する最大の要因となる。戦後の日本や現在の中国がその好例である。
第二に、資本収支の動向である。資本勘定の自由化とともに、国民経済の海外資金を引付ける要因が、為替相場変動への影響力を増加させる。成長力、インフレや失業の有無など、いわゆるファンダメンタルズの比較が為替動向を決めることになる。
第三は、金利格差による資金の流れの影響である。特に、短期資本の動向は相場を乱高下させる。短期資本の流入を長期資金と誤認したことが、97年のアジア通貨危機の原因であったことは記憶に新しい。この経験からアジア各国の為替管理は、資本勘定を中心に強化された。
管理が殆ど無い先進国間では金利差は経常勘定の動向以上に為替相場変動の主たる要因となる。米ドル、ユーロと円の金利差が円安をもたらしていることは今更言うまでもない。
第四は、通貨を支える国民経済の安全性である。最近の円安は、北朝鮮のミサイル発射に対し、日本の安全性が問われていることの反映と言えよう。着弾点に近いことに加え、日本の防衛能力への疑問が資金の流れと為替相場に影響を与えているのである。
日本は灰の中からの復興のため大砲を捨てバターをとった。その選択は正しかった。しかし復興が進みOECDに参加した辺りで見直しを行うべきであり、この状態が今でも続いている。
自民党の総裁選挙や来年の参院選挙を控え、年金、医療、消費税引き上げ、靖国問題などが論議されているが、安全保障の討議が少ないのは残念である。国の安全が維持されることが、論議されている全ての問題の前提だからである。
戦後の選択は「大砲かバターか」であった。あるボランティア活動の報告によると住所不定者の最も多い病気は糖尿病とのことである。バターは既に取りすぎの状態である。内外の環境変化に合わせ、我々は「大砲とバターのバランス」を真剣に討議しなければならない。
(注)
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