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眞野輝彦コラム
2006.09.29 「円の対外価値の安定」 ―円安対策のツールを持たぬ日銀 ―
日本の経常黒字が続いているにも拘らず、為替相場は円安に振れている。円は対ドルのみならず、対ユーロ相場が150円をつけるなど、各国通貨に対して下落しており、明らかに円安である。原因は相場決定要因が、経常収支より資金移動に移っているからである。日本の公募投資信託に占める外貨建比率は40%に達している。短期預金金利はインフレ率を下回り、実質預金金利はマイナスであることが、貯蓄の海外流出を加速させているのである。
中央銀行の責務は、物価の安定、インフレ抑制、換言すれば円の価値を目減りさせないことにある。物価の安定が長期的には、経済の持続的成長に繋がるからである。
円安は円の他通貨に対する購買力の減少であり、円安は原油高によるインフレを加速させ、消費者の負担を増加させる。高度成長時代のように、インフレ率以上の賃金上げは期待できない。グローバル化が進む中での賃上げは、経済活動を海外に押し出すからである。
ところが日銀は、米国連邦準備制度(FED)や欧州中央銀行(ECB)と異なり、円の対外価値安定のツールを持っていない。外国為替市場への介入決定権は、財務大臣に帰属するからである。前回の法改正は日銀の独立性、総裁の任免権などの手直しに止まった。円の対外価値安定の観点では、日銀は片肺飛行を続けていると言えよう。更なる改正が必要だが、そのためには総裁スキャンダルのけじめを含め、日銀の信認回復が不可欠であることは言うまでもない。
戦後の外貨不足時代の惰性である円安歓迎論が株式市場などには強いが、消費者の視点に立ち、対外購買力の目減りというデメリットの再確認が必要である。
低利の円調達によるキャリー・トレードも再び活発化し、世界に過剰流動性を供給している。日銀は片肺飛行ながら、国内物価のみならず円の対外価値を考慮した舵取をすることが肝要である。
(注)
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