ホーム > 眞野輝彦コラム > 「来年の米国経済」 ―ハードランディングの可能性は少ない―
眞野輝彦コラム
2006.12.11 「来年の米国経済」 ―ハードランディングの可能性は少ない―
米国中間選挙の結果、上下両院とも民主党が過半数を占め、1994年の第一期クリントン政権の中間選挙以来12年ぶりで民主党が議会の支配権を取り戻した。
このことが米国経済に与える影響について考察したい。
「分からない時には、相場に聞け」という諺がある。米国の株式相場や米ドル相場には今のところ大きな変化はみられない。政府が共和党、議会は民主党と言うねじれ現象の中で、マクロ経済政策の大きな変化はないと市場関係者が見ているためと思われる。
短期的、即ち来年の春頃までは、インフレを抑えるための金利引上効果を見定める展開になろう。問題は来年後半の予測だが、中間選挙を左右したイラク情勢次第による二つのシナリオに別れる。
イラク政策の舵がうまく取られ軍撤退が可能になると、安心感から民間需要が拡大し、軍事費の縮小による財政赤字の改善期待も加わり、景気は上昇に向かう。逆に、イラク問題に進展が見られず、新しいテロなどが発生する可能性も否定できなくなると、消費や投資が停滞し、景気の悪化につながるシナリオである。
この場合、新しい経済政策が必要となるが、「企業や株式市場に優しい共和党」と「労働者に優しく、企業に厳しい民主党」の基本的政策の違いが二つの形で表面化する。
第一は、「最低賃金の引き上げ」問題である。労働の生産性上昇以上の賃上げにでもなるとインフレに繋がり、景気が悪化しても、金利の引き下げが出来なくなることである。
第二は、日本にも直接影響することだが、労働者に優しい政策として保護貿易主義、貿易摩擦再燃、対米黒字国への為替切り上げ要求などが浮上する可能性である。
幸いなことに、過去の実績を見るとねじれ現象の時や中間選挙後の2年間の成長率は高い。政党間の相互牽制が、政策をぶれにくくする為と思われる。今回も、成長率が少し下がることはあっても、景気が急速に悪化するいわゆるハードランディングは回避できると予想したい。
(注)
本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。