眞野輝彦コラム
2007.08.13 「円過小評価の度合」
―実質実効為替相場はプラザ合意時点以上の円安―
IMFは8月6日、日本経済の審査報告書を発表し、円が為替市場で過小評価されていると指摘した。2004年3月以降、日本は為替介入を行っていないが、米議会では日本は、超低金利を維持し、円を不当に安く維持しているとの批判も出ている。そこでプラザ合意時点(1985年9月)と比較しつつ円安の程度を検証しておきたい。
実体経済と為替相場との関連考察には、市場での為替相場(名目為替相場)に加え、貿易・サービス取引量を加味した名目実効相場、更には相手国とのインフレ格差を調整した実質実効相場の検証が大切である。
プラザ合意時点の円ドル相場は240円台であり、現在の為替市場での円の価値は約2倍円高である。名目実効相場は、中国、韓国、アジア地域との取引が増加していることから約135円と推計される。
最も円安度合いが強いのは、実質実効相場である。相手国よりインフレが低い国は、コスト増加圧力が少なく、その分相対的競争力が強化される。バブル崩壊により日本の物価はマイナス又はゼロ近辺で推移しており、このことを反映し1995年以降円の実質実効相場は下落し続け、直近ではプラザ合意の水準、即ち240円台の円安である。輸出の採算が良いのは当たり前とも言えよう。このように考察してくるとIMFの指摘も当然と思われるのだが、注意すべきことが二つある。
第一は、Globalizationによる資金移動が上記の実質実効相場との乖離を拡大させていることである。インフレ格差は金利格差と並行するが、資金移動は名目金利格差要因に牽引されており、低金利円が円安の大きな原因になっている。Yen Carry Trade はその象徴である。
第二は、経済外要因が為替相場に与える影響である。いつも繰り返していることだが「円という銀行にはガードマンがいるのか?」、即ち「自分で自分の国が守れるのか?」という疑問は中でも最大の要因である。参議院で民主党が第一党になったことが、この疑問に拍車をかけている。
米国サブプライム問題、関連したヘッジファンド破綻、ECBによる15兆円に達する流動性供給の実施等の環境下で、為替相場のVolatilityは更に拡大しそうである。
(注)
本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。