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眞野輝彦コラム
2008.03.21 「12年半ぶりの円高メリットの消費者還元政策を」
―日本の米ドル建貿易取引収支は赤字―
原油価格が110ドル、金価格は1000ドルを超え、他方で米ドル相場が一時95円台まで落ち込んだ。Stagflationが予想される中で、日本は景気対策の優先順位の選択を迫られている。注意すべきことを三つ指摘したい。
第一は、グローバル化の進捗で企業は投資や雇用を国内で行うか海外で行うかの選択肢を持つため、企業業績と賃上げとがデカップリング(連動の切断)されていることである。春闘も後半を迎えているが、ガソリンや食品価格の大幅な値上げをカバーする賃上げはとても望めそうもない。無理な賃上げを行えば、日本の企業活動は海外に押し出され、国内雇用を縮小させることになる。
消費拡大のための賃上げ政策が期待できないとなれば、賃金の購買力を増加させる政策に頼らざるをえない。幸い最近の円高は賃金の購買力を増加させる。円高のネガティブ効果を心配する声も高いが、現在の実質実効為替相場は30%以上円安の水準にある。この10年間の日米のインフレ格差は年率3%を越えており、毎年3%円高になっても日本の競争力は落ちないからである。この間企業はこの大幅円安に甘えていた側面があり、消費者は高い価格を支払わされていたことになる。
第二は、日本経済にはドル安円高はマイナスと認識されがちだが、日本の米ドル建貿易収支は赤字に転じていることである。日本経済全体ではドル安・円高はメリットなのである(下図参照)。円建取引の増加で米ドル建て輸出比率は50%を割り込でいるのに対し、輸入のドル建比率は74%と依然高いためである。この貿易通貨比率は財務省発表の昨年下半期の数字であり、その後の原油や農産物など急騰を考えれば、米ドル建貿易赤字は更に悪化していると推測される。
第三に、ドル買介入論も散見されるが、協調介入のコンセンサスが出来ていない状態では介入効果は期待できないことである。最近の為替相場の変動要因が米ドル不安にあり、米ドル政策金利は実質ゼロにまで低下している。他方、対ユーロ、対アジア通貨では必ずしも円高が進んでいるわけではない。前回の大規模介入による円安維持政策が日本の構造改革を遅らせたことを忘れてはならない。
賃上げに多くを期待できない状況下で、円高のガソリン、輸入食品等の価格引下げ(上昇抑制)効果は消費者にとり大きな福音である。福田総理の主張する消費者優先の経済運営のためには、今こそ食料輸入や未だに残っている価格規制の緩和・撤廃など、円高の消費者還元効果を促進させる政策が必要である。
日本の米ドル建貿易収支の推移(MURC作成)

(注)
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