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眞野輝彦コラム
2008.05.12 「1セントコインの鋳造コスト」―小額コインの比較と為替相場―
米国財務省が1セントと5セント硬貨の合成比を変更する法案を提出し、議会審議が始まるとのニュースを見て、戦後の日本でアルミ・コインが鋳潰されて鍋・釜に変わったことを思い出した。この現象は戦後の物不足による日本のインフレの象徴であり、今後の米国のインフレを暗に予想させるからである。
現在の合金比率は、1セント硬貨が亜鉛97.5%、銅2.5%、5セント硬貨が銅75%、ニッケル25%だが、比率変更の理由は、鋳造費用は1セント硬貨が1.26セント、5セント硬貨が7.7セントと額面を超えてしまった為である。背後に最近の銅、亜鉛、ニッケルの価格の高騰があることは言うまでもない(下図London Metal Exchange銅相場推移参照)。
幸い、鋳造コストが額面を上回っているのは小額コインであり、10セント硬貨は4セント、25セント硬貨は10セント、1ドル硬貨が16セントといずれもコストは額面以下であり、インフレ浸透度は軽微なのかもしれない。議会の一部には硬貨の合成比を変えるより1セント硬貨を廃止したらどうかという論議もあるようである。しかしこの考えはうっかりするとデノミと同じように、価格の端数切り上げによるインフレに繋がりかねないことを注意する必要がある。
海外旅行をした時に使い残したコインがどこかに残っていると思い、机の引き出しを調べると、1セントが10枚と25セント3枚出てきた。アルミの1円玉は子供でも拾わない日本の世相だが、リンカーンが鋳造されている1セントコインを改めて手にとるとなかなかの重みである。合成比率の変更は「悪化が良貨を駆逐する」グレシアムの法則が生きていることを示すのだが、同時に変更後の1セントと1円玉と比較し通貨価値の比較、即ち為替相場を考えてみる必要があると思った。
ところで米国では2007年、1セント硬貨が74億枚、5セント硬貨が12億枚、鋳造されており、変更後も旧通貨の骨董的価値は上がることはなさそうである。念為。

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眞野 輝彦 (まの てるひこ) | ||||||||||||||||
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事 | |||||||||||||||||
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(注)
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