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眞野輝彦コラム

2008.05.21 「マイナス実質金利は増税と同じ」

 原油価格が125ドルを越え、食料、原材料の値上がりも続いている。しかも自動車向け鉄板価格の引上率が30%に決まったように、値上幅は二桁のものが多いのである。直近の消費者物価指数は1.2%だが、卸売物価は既に3.7%上昇しており、消費者物価が今後大幅に上昇することは疑いがない。その証拠に、長期金利(10年もの国債金利)は、昨年度末3月の1.275%から1.7%近辺にまで上昇している。
 一方、春闘による給与所得上昇率は1%程度にすぎない。Globalizationの浸透で、国内労働力と海外の安い労働力とが競合するからである。値上に見合う賃上げが伴わないため、家計の実質所得は減少しているのが現状である。
 この購買力減少に拍車をかけているのが、マイナスの実質金利である。日銀の市場誘導金利は0.5%であり、銀行の6ヶ月もののスーパー定期預金金利は0.27%である。貯蓄金利からインフレ率1.2%を差し引いた実質預金金利はマイナスであり、このことは預金が毎日目減りすることを意味する。
 逆に実質マイナス金利の最大の受益者は、総債務(借入金、政府短期証券を含む)が1,000兆円を越えている公的部門である。家計部門とは対照的に、借金が毎日実質的に減少するからである。実質マイナス金利は、貯蓄者の所得を公的部門に移転させ、消費や貯蓄に回しうる可処分所得を減少させる実質的増税なのである。
 道路財源問題、年金問題、防衛関係予算などの無駄使いの不満に加え、マイナス金利という実質増税が選挙民の不満に拍車をかけ、福田内閣支持率の急低下に繋がっている。政治のリーダシップが欠如する中で、通貨価値の安定維持が任務であり、独立性も保障されている日本銀行の責任は極めて重いのである。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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