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眞野輝彦コラム

2008.07.22 「漁業ストライキに思う」 ―農業政策との共通点と相違点等―

 全国漁業協同組合連合会など17漁業団体が7月15日一斉休業を行った。約20万隻の漁船が参加したこの漁業ストライキは、燃料費高騰による窮状を訴え、燃料費の補填などを政府に要求することが目的である。漁民の生活がかかっている問題であり、同情を感じる一方で、補助金の支給にはにわかに賛成できない。農業補助金と対比しつつ、この問題を整理しておきたい。
 第一は、ここで漁船操業者に補助金支給を行えば、運輸業者、ハウス栽培者などその範囲が限りなく拡大しかねないことである。最終的には家庭への補填論(減税論)に繋がり、そのような財源が無いことは明らかある。
 第二は、戦後行われてきた農業補助金の経験である。農家所得支援が結果として農業改革に繋がらず、FTA交渉などの障害となっている。農業問題と同様、漁業改革、生産性向上に繋がる対策が必要である。最も重要な要素は後継者も少なくなっている現状への業界や各操業者の自己改革である。操業、運搬、市場など共同化から、養殖拡大などの魚資源保存までその裾野は極めて広い。規模拡大の点は、移動性が全く無い農地が絡む農業規模拡大よりは、可能性は大きいのではなかろうか。
 第三は、漁業水域の確保の問題である、北方領土に始まり、最近問題になっている竹島、更に尖閣列島など、地下資源開発問題である以前に、漁場の問題である。竹島は既に韓国軍により占拠されている。自分の家には自分で鍵を掛けることが必要であり、この問題の日本のコンセンサスを形成する良い機会でもある。
 第四は、原油・食糧価格急騰による日本の所得の生産国への移転、即ち交易条件の悪化を阻止する円高政策である。たとえドル建の原油価格が上昇しても、円高になれば少なくとも円建価格上昇の一部を引き下げることが出来る。輸出にマイナスなことはいうまでもないが、工場の海外移転、輸出の円建化によりドル建て貿易収支は赤字であり、日本全体にはプラスである。漁業は勿論、給与・ボーナス増加が期待できない家計にとってはメリットが大きいのである。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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