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眞野輝彦コラム

2008.09.01 「難しい相反経済現象への対応」

―「あれもこれも」ではなく、「あれかこれか」の選択が不可欠―

 米国は住宅金融会社への公的資金投入を可能にする新法を導入した。ここに至る経緯を日本のバブル崩壊から住専への公的資金投入までと比較すると、似たような経過をたどっている。しかし決定的に異なる点が二つある。
 第一は、バブル崩壊とサブプライム問題が、土地、住宅を中心にストック価格を大幅に下落させるのは当然だが、当時の日本では消費者物価などフロー価格が相対的に安定していたことである。因みに、バブルで地価がピークを付けた1990年以降の全国消費者物価指数(2,000年=100)の前年比上昇率は1991年3.3%、92年1.6%、93年1.3%であった。対照的に現在の米国のサブプライム問題では、土地・住宅価格が下落する一方で、原油や農産物価格の急騰を反映して消費者物価が急上昇しているのである。
 第二は、日本のバブル崩壊は日本だけの現象であったが、今回はサブプライムの融資債権が証券化され、火の粉が世界中にばら撒かれたため、米国のみならず日本や欧州、更には発展途上国にも波及していることである。
 この現状への対応策策定は極めて難しい。逆方向に働く複数のベクトルが同時に存在するからである。景気後退とインフレが並存するスタグフレーションが途上国も含め世界的に広がっていることに加え、土地・住宅などのストック価格は下落し、他方で原油・食糧価格などフロー価格は急上昇するという逆行現象が混在しているのである。
 この逆行する複数問題へのマクロ政策採用は相反効果をもたらす。フローの物価上昇を抑えるため金利を引上げれば、景気への悪影響があり、土地・住宅価格をも更に下落させ、逆もまた同様である。かかる状況ではバブル当時の日本の不動産融資への総量規制のようなミクロ政策が有効であり、既に、株式市場や商品市場で先物空売り規制が導入されている。各国が相互に連絡を密にしながら、自国の実情に合った木目の細かいミクロ政策を積み上げることが必要である。
 しかし日本は巨額の財政赤字というもう一つの問題を抱えている。与党の景気対策が難航したのは、選挙を控え「あれもこれも」という要請があり、他方財政赤字圧力から「あれかこれか」の選択を迫られているからである。一部にプライマリー・バランス達成年度の先延論も聞かれるが、これは日本の国際的信用を悪化させると同時に選挙民に国の夕張化を意識させ、消費を萎縮させる。このことを与野党とも再確認しなければならない。

(注)

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