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眞野輝彦コラム

2008.10.21 「Lender of Last Resort」

−各国中銀のドル供給に思う―

 日本銀行は9月中旬から外国銀行の支店や証券会社などを含めた金融機関を対象に米ドル資金を供給するOperationを開始した。このOperationは金融逼迫に対応するための各国中央銀行間協定に基づく協調行動である。
 この協定は米国の中央銀行であるFEDのドル供給機能にかげりが出ていることを示している。各国の中銀はLender of Last Resortとして自国通貨供給の責任を持ち、一方銀行監督責任は、海外にある支店や現地法人を含め、営業許可を与えた各国の金融監督当局にあるという従来の役割分担が崩れ始めていることを意味するからである。換言すれば、FEDが自らの責任とリスクでNY金融市場参加者へ米ドルを供給する機能を充分に果し得なくなり、欧州や東京の市場で米ドル供給を他国中央銀行に依頼せざるを得なくなったのである。
 このかげり現象は、米国が永年米ドルの対外赤字を放置したことに加え、各国が米ドル利用の便利さに甘え続けたことに起因している。Globalizationに対応するGlobalな監督システムの構築がみられず、財政や金融監督は個別国に任されているという実体経済とシステムとのギャップの発生を反映している。単一通貨を採用し、ECBが設立されたEuro地域も例外ではない。金融政策はECBだが、銀行監督は各国責任で行われている。麻生内閣で中川昭一財務相が金融担当相を兼務していることは危機管理の観点から極めて適切と言えよう。
 Subprime問題は過剰流動性と右肩上がりの住宅バブルの中で発生した。バブル崩壊後の世界のマネー・サプライ関連の指標はむしろ増加しているにも拘わらず、過剰流動性の状態が一挙に逼迫に転じた理由は、銀行や企業破綻による相互の信頼関係が急速に失われたことに起因し、FEDの通貨管理能力の低下が一因である。
 戦後のIMF体制は米国、米ドル中心とする調整可能な固定相場制度であった。この体制は1973年以降、為替相場のフロートで崩壊したまま放置された。当初360円であった円ドル相場は100円前後と1/3以下に低落しているのが実情である。
 米ドルに代わる受け皿通貨が残念ながら見当たらない状況下で、経済実体に即した金融システムの再構築が問われている。当分は各国の協調で乗り切らざるをえないが、その底流にある変化をこの機会に再確認することが肝要である。

(注)

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