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眞野輝彦コラム

2009.03.02 「相続税免除無利子国債の発行」

―過度の期待は禁物―

 先月13〜14日にローマで開催された先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議G7は世界景気の悪化が2009年中続く可能性が高いとの認識にたち、金融部門の安定、内需のため各国一斉に財政出動など浮揚政策を総動員すること、保護主義を回避することなどを織り込んだ共同声明を発表し閉幕した。
 ゼロ金利が続く日本では金融政策は既に限界に近く、財政政策への期待は大きい。問題は財源である。既に公的債務は他の先進国には例のない赤字規模に達している。同時に企業収益の悪化で、税収の大幅に落ち込みが予測される。豊田市の法人市民税の96%減少が予測されているように、輸出企業の城下町の減収は極めて深刻である。
 中川大臣辞任というどたばた騒動の中で浮上してきたのが「相続税免除無利子国債」である。利子が付かない代わりに将来の相続時に税金が免除される国債発行への期待が与野党双方で高まっている。しかしこの構想には幾つかの問題がある。
 第一は、この「相続税免除無利子国債」を購入する資金は、箪笥の中にしまってある訳けではない。既に、他の通常の国債、株式、外債などに投資されている。新種国債を買う為には、通常国債や株式などを売却する必要があり、長期金利への悪影響や、収益悪化を反映して安値を更新している株価を更に押し下げる要因となる。
 第二は、Obama米大統領の経済政策による巨大財政赤字を埋める大量国債の発行予想を筆頭に、世界各国の国債発行が予想され、既に長期金利は上昇に転じ始め、国債の発行金利が民間債より高い国も現れている。発行残高が極度に大きい日本国債が再び格下げになる可能性も出てくるのである。
 第三は、現行の相続税法で課税される相続資産額は億単位であり、新種国債購入メリットは当然富裕層が享受することになる。総選挙が近づく中で与野党、特に、格差社会を批判している野党はどのように理論武装するのであろうか。
 第四に、将来の税収を減少させる、税の先食いであることも忘れてはならない。
 新種国債への過度の期待は禁物である。政府紙幣を印刷し空からばら撒くなどの暴論まで聞かれる始末である。未曾有の景気悪化だからといって「何でもあり」の発想は深く戒めなければならない。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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