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眞野輝彦コラム

2009.03.23 「春闘と円高」

―スーパーの値下げや高速料金引下げ―

 春闘はベース・アップどころか、定期昇給さえも見送られる企業も多い情況にある。背景に大幅な輸出減少と生産縮小による企業採算悪化があることは言うまでもない。給与が上がるどころか低下するこの環境下で、消費を拡大させ景気を回復させる為には、名目給与の実質購買力を上昇させるしか方法が無い。
 大手スーパーは勝ち残りを賭け、数多くの商品価格値下げを始めた。高速道路料金の週末引き下げの目的が消費者の実質購買力拡大効果を期待したものであることは言うまでもない。
 ところで物価の引下げに極めて有効なのが、給与の対外購買力を増加させる円相場の上昇、即ち円高である。原油はじめ天然資源を輸入にたよるわが国では、この効果は極めて大きく、また外貨建輸入が輸出を上回っている現状では、国民経済全体としてはメリットの方が大きいのである。
 今回の不況とよく対比される1929年の大恐慌時に、日本への影響が大きかった原因は、関東大震災と重なったこともあるが、当時の輸出の40%を占め、しかも米国向が80%であった主力商品、生糸輸出の大幅減少にあった。商品が生糸から自動車に替ったものの、不況の原因は当時も今も同じ輸出依存体質なのである。日本経済は需要不足もさることながら、供給過剰の状態なのである(3月11日付前回コラム参照)。
 先週末のロンドンG20に示されたIMFの今年度見通しでは日本のGDPの実質成長率はマイナス5.8%と大幅に引下げられている。IT時代では生産調整が急速に行われ、やがて底を打とうが、基本的に輸出依存構造を変えないと、景気低迷は長引くし、回復時期も他国が回復した後のしんがりということになる。「円安は善、円高は悪」という戦後日本に刷り込まれたDNAを払拭させる意識改革が不可欠であることを再度主張したい。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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