ホーム > 眞野輝彦コラム > 「GPSはもう一つのビンの蓋か?」
眞野輝彦コラム
2009.07.01 「GPSはもう一つのビンの蓋か?」
―総選挙の最大の争点は安全保障問題―
日本で使われているカーナビ・システムは米国の宇宙衛星との通信システム、GPS(Global Positioning System)を無料で利用していることをご存じの利用者は必ずしも多くはないであろうし、ましてこの無料利用が日本の安全保障への「ビンの蓋」となる可能性を認識されている利用者はさらに少ないのではなかろうか。高齢化時代に徘徊癖の高齢者に携帯をもたせ家族がその居場所確認に利用することに似て、重要人物の移動を含め、このシステム利用者の居場所や北朝鮮の核物質や武器の移動などもモニターできるのである。もともと軍事用に開発されたこの技術は、必要に応じ利用者を迷路に迷い込ませることも可能であろう。だからこそEUは独自のGalileo Positioning Systemを開発し、中国、インド、トルコなども独自のシステムの保有を指向しているのである。この意味で与野党協議の結果、第169回通常国会に衆議院内閣委員長案として提出された宇宙基本法が、昨年5月に自民、公明、民主党の賛成で成立し、8月27日に施行されたことは画期的なことと言えよう。
言うまでもなく最大の「ビンの蓋」は安保条約による、在日米軍の存在である。日本を外敵から守る事と同時に、日本の軍事大国化を抑えるという二面性を持つのがビンの蓋論である。戦後の復興過程で生産資源を経済に集中できた日米安保条約のメリットは極めて大きかった。しかし世界情勢も変化し、米国も兵力配置を見直している。総選挙が近くなると政党間の論争が雇用、賃金、年金など経済問題に集中しがちだが、国民の安全を如何に確保するかが独立国家の最大の責務である。平和を叫ぶだけで安全は確保できない。安保条約は引き続き重要な安全保障政策の中核であるが、状況変化に対応し、日本の意志を織り込んでゆくことが必要である。特に政権交代を叫ぶ民主党は、安全保障政策の具体的明示が不可欠である。カーナビ利用者のみならず全ての有権者が、このビンの蓋問題をどのように、変化させ、進展させるのか、自分自身の課題として整理し、総選挙に臨むことが肝要である。
![]() |
眞野 輝彦 (まの てるひこ) | ||||||||||||||||
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事 | |||||||||||||||||
| |||||||||||||||||
(注)
本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。
