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眞野輝彦コラム

2009.07.13 「美人のいなくなった為替市場」

―国際通貨システム改革の壁―

 ラクイラ拡大サミットで、安定して良く機能する国際通貨システムの促進が取り上げられた。しかし改革の具体策を見つけることはそう簡単ではない。
 国際通貨問題の中心課題である為替相場は、よく美人コンテストに例えられる。為替相場には通貨間の相対比較が反映されるが、美人コンテストも参加者の中から相対的に最も美しいと判断される美人が選出されるからである。美人コンテストに基準があるように、通貨選択にも判断基準がある。各通貨を支える国民経済の成長率、インフレ率(金利)、雇用(失業)、対外収支など経済的要素に加え、政治的安定、国際的なリーダーシップ等も選択要素になる。美人コンテストでの選出は数人の審査員が行うが、為替相場の審査員は輸出入業者、国境を超える資金の運用・調達者、更に投機家などそのすそ野は極めて広い。その結果、政治的要素、地域的な親近感などの影響が強くなりがちになる。
 戦後、圧倒的な経済力、軍事力に加え、唯一の金交換性を持つ通貨として米ドルが国際通貨コンテストの栄冠を独占してきた。しかし日本や欧州の復興とともに、円、ドイツ・マルクなどとの競合関係が強まり、ニクソン・ショック、プラサ合意、ユーロ誕生などを経験し、米ドルの価値はIMF固定相場360円から90円近辺まで約1/4に減価しているのである。
 このことを踏まえ最近の為替相場の動きを見ていると、「美人コンテスト」と言うより、「ネガティブチョイスの中のより無難な選択」に変化しているように思われる。ファンダメンタルスが良い美人通貨が選択されるというより、価値下落などの不安の多い最悪の通貨を選択しない市場に変わっているのである。
 通貨を支える主要国の政治経済実態を比較すると、米国はサブプライム問題を発生させ、過剰消費の体質に変化が見えるものの、外国からの資金依存が続いている。日本は輸出依存体質から脱却ができず巨額の公的累積債務を抱え、政治も不安定化している。ユーロ地域は金融政策こそECBに統合されたものの、国によってはGDP対比では米国で経験した以上の資産バブルを発生させ、域内各国の財政政策も全体の整合性が取れているは言い難い状況にある。
 元気がよいと言われているBRICS通貨の国際的信頼度はまだまだ未成熟であり、かといって使い勝手の悪い人工的通貨、SDRの市場取引が急増するとは思えない。為替市場でのネガティブ回避コンテストの状態が当分続きそうである。
 日本の政治も自民党の凋落が目立つが、民主党など野党も外交政策を含め具体性が欠け、政権担当能力への不安は大きい。変化の激しい国際情勢の変化に、政治・経済のインフラが追い付いていない。かかる状況下での国際通貨システム整備・促進のハードルは極めて高いのである。

(注)

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