眞野輝彦コラム
2009.08.11 「同一労働とは何か?」
−責任や適用税制の差にも注意が必要−
正規雇用と非正規雇用の問題とも絡み、同一労働・同一賃金の問題がクローズ・アップされている。一見当然のことと思われがちだが、何が同一労働かということになるとその認定はそう簡単ではない。チャップリンの映画モダン・タイムスに出てくるように同じコンベヤー・ベルトの前で同じ時間、同じ作業をするだけなら、同一労働・同一賃金との認定は容易なのだが、国際競争が浸透し雇用形式が多様化するに従い、同一労働の認定はそう簡単ではなくなっている。具体的な問題を三つ例示してみたい。
第一は、労働時間と責任の問題である。確かに、正規の労働時間中は、正規社員も非正規社員も同じ仕事をしているとしても、注文の増加に対応して残業するということになると事態は異なってくる。非正規社員は終業時間がくると帰宅する自由があるが、正規社員はそうはいかない。場合によってはサービス残業をしてまで、非正規社員の分を含めた仕事を終わらせなければならない。換言すれば両者の責任には大きな違いがあるのが現実である。非正規社員のいつ解雇されるか分からないというリスクは、この労働の自由度との見返りということにもなる。転勤問題についても同じ問題があることは言うまでもない。
第二は、適用される税制の違いによる手取給与の差である。正規社員の給与の税金は雇用者により源泉徴収が行われ、控除項目も限定されている。一方、非正規雇用者の所得の税務当局の把握度はサラリーマンのようなカラス張りの状態ではないし、種々の手当などの違いもある。名目給与の絶対額は少ないにも拘わらず実質手取給与が逆に多くなることも稀ではないのである。
第三は、給与の実質購買力の違いである。最低賃金の地域格差が注目されているが、地方ごとの実質購買力、特に土地や住居の格差は大きく、名目賃金と実質賃金の違いも考慮されなければならない。
このように、何が同一労働かという問題等はそうやさしい課題ではない。非正規雇用廃止論も出ているが、グローバル化による競争激化の中で、仕事の責任、自由度、失業リスク等を如何にバランスさせる賃金体系の構築が政策の優先課題と思料する。
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眞野 輝彦 (まの てるひこ) | ||||||||||||||||
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事 | |||||||||||||||||
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(注)
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