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眞野輝彦コラム

2010.01.21 「物価変動と同時に物価の絶対水準の国際比較が大切」

―金融政策判断基準のグローバル化への適合―

 グローバル化の浸透は各国物価の平準化をもたらす。それはカネ、モノのみならず賃金や地価にも影響することは冷戦終焉後の経験が実証している。貿易障害が無い限り物価の高い国には安い国の商品が流入するのは当然であり、これが国際貿易のメリットである。わが国のような貿易立国は金融政策の判断基準をこのグローバル化に適合させる必要がある。
 ところが戦後の右肩上がり経済の時代に刷り込まれたインフレに関する意識を変えることは簡単ではない。物価の番人である日銀も政策決定にあたり国内物価の変化を最重要視している。昨年12月18日に日銀が発表したレポート『「中期的な物価安定の理解」の明確化』によれば、金融政策運営に当たり、物価の安定は「0〜2%程度の範囲内にあること」としている。換言すれば国内の物価変動(主として消費者物価)の方向性を見ながら金融政策が決定されることになる。このペーパーには「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」とも記されているが、現実の消費者物価指数は昨年3月以降前年比マイナスが続いている。
 この矛盾を解消させるためには、物価の変動に加え、物価の絶対水準の国際比較が不可欠となる。上記のとおり海外から国内より安い商品を購入する貿易メリットは、戦後のように毎年賃金が上昇するどころか手取給与が減少する現状では益々大きくなる。消費者の喜ぶ安い商品流入の結果をデフレと認識することは、貿易のメリットを否定することになる。初期の日米貿易摩擦にOne dollar blouse問題があった。日本からの安い輸入品との競合は、米国のブラウス生産者には迷惑であったが、米国消費者には福音であった。今その逆の現象が日本と途上国の間で発生している。この国際的価格平準化の流れを流動性供給政策のみで押し止めることは難しい。
 わが国は世界最大の財政赤字を抱え、金融政策への圧力が強まりがちである。しかし他方で緩和政策による過剰流動性が資源・商品価格の急騰に繋がり始めていることに注意する必要がある。物価の方向と同時に物価水準の国際比較を考慮し、デフレの定義を明確化し、金融政策を実行することが肝要である。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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