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眞野輝彦コラム

2010.03.23 「 所得効果から価格効果へ 」

―パラダイム・シフトが不可欠―

 景気回復の鍵となる民間消費の拡大には、家計所得の引き上げが有効なことは言うまでもない。しかし、厚生労働省が2月17日発表した毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によれば、2009年の労働者1人当たりの月間現金給与総額は315,294円と前年から3.8%減少している。
 所得の引き上げがないとなると、減少する給与の実質購買力を増加させる価格効果に頼らざるを得ない。幸か不幸か物価の下落が続いている。売り手には深刻な事態だが、家計にとっては苦しいなかの一筋の光明である。
 3月11日発表された昨年10〜12月期の実質GDP改定値は、前期比0.9%増(年率3.8%増)と3カ月連続プラスとなった。景気回復宣言が出されてもおかしくないのだが、相変わらず、物価低下―売り上げ低下―企業収益減―賃金減の悪循環を危惧する意見が根強いのは何故なのであろうか。
 理由は、物価の判断基準が消費者物価の変動におかれていることにある。海外と隔離された戦後の閉鎖経済の下では国内物価の下落をデフレと認識するのは正しかった。しかし、開放経済の現状では、価格の上下よりも物価水準の海外比較が重要である。海外に安い商品があれば、国内価格が引きずられるのは当然であり、これが国際貿易のメリットである。フロー価格と同時にストック価格の国際比較も重要である。欧米に比較し日本の住宅が貧弱なのは、住宅価格が高過ぎるからであり、バブルで高くなり過ぎた不動産価格の正常化過程の下落をデフレと認識すべきではない。
 戦後の日本の相対的に安い賃金が、物価上昇―売上高増加―収益拡大―賃金引き上げのサイクルを可能にした。この時代に、日本人の頭に刷り込まれたDNAを消し去るパラダイム・シフトが、今や不可欠なのである。
 戦後の日本は、米国を追いかけながら産業構造を改革し、成長してきた。現状は、逆に、途上国に追いかけられる立場で、付加価値の高い産業にシフトさせる「産業の仕分け」が必要である。さもないと日本は、途上国のなかに埋没することになる。

(注)

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