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眞野輝彦コラム

2010.05.11 「公的債権債務の同時圧縮」

―ギリシャ問題と日本―

 EUは5月2日の緊急財務相会合でIMFと協力して財政危機に陥っているギリシャに対し今後3年間で1100億ユーロを上回る協調融資を実施することを合意した。第一回融資は大量のギリシャ国債が償還を迎える5月19日までに行われる見込みである。一方、ギリシャのパパンドレウ首相は、歳出削減や増税などにより、向こう3年間に300億ユーロの歳出を削減する計画を発表し、議会はこれを承認したと報じている。しかし、その実現は容易ではなさそうである。既に、緊縮財政への反発から公務員ストや暴動も報じられ、世界の株式市場の下落に繋がっている。先日のワシントンG20で回復基調が予想以上に強いことが確認されたばかりだが、世界の主要市場での株価の大幅下落は、世界景気の回復要因以上にギリシャ問題の影響が大きいことを示している。
 GDPの2倍近い巨額の公的債務を抱える日本にとってギリシャ問題は他人ごとではない。既に、一部の海外の格付機関は、将来日本国債の格下げの可能性を示唆しているのである。ギリシャ問題の教訓を踏まえ、我々が注意すべき事項を二つ指摘したい。
 第一は、過大な国債発行の問題は、償還時の借り換えのリスクと債務全体の圧縮が可能か否かに大別されるが、今回の教訓はより重要なのは後者であることを示している。6月に予定されている連立与党の中期見通しの内容、即ち、プライマリー・バランスの均衡見通し、歳出削減の具体策、増税問題など具体策を見る必要がある。しかし、少なくとも2010年度予算では税収を超える44兆円という国債発行が予定され、残高増加が加速している現状を直視することが肝要である。
 第二は、借り換えリスクのため約1000兆円に近いグロス債務に焦点が当てられがちだが、公的部門は同時に土地建物などの実物資産や各種出資金などの金融資産を保有している。一般政府の部門別資産・負債残高は、2008年(暦年)までしか公表されていないが、2008年は11.8兆円の資産超過であった。その後の追加国債発行や地価低下などの資産の目減りで正味資産はマイナスに転じている可能性が高い。しかし、保有資産があることには疑いが無い。これらの資産を売却し、国債を返済すれば金利支払額も圧縮できることになる。不良債権問題対策で一部の金融機関は本店の建物を売却しリース・バックした。日本がギリシャに続く世界の不安要因とならないために、公的部門の債務と資産を同時に圧縮することが必要である。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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