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眞野輝彦コラム

2010.06.01 「EUのギリシャとASEANのタイ」

―通貨主権と財政主権のバランス―

ギリシャに端を発するユーロ相場不安が続いているが、タイの政治混乱が新しい不安要因に加わりそうである。混乱は沈静化しているもののタイ経済や国際的信頼度へネガティブ効果は小さくないと思われるからである。EUのギリシャとASEANのタイ問題を比較し、地域統合の注意事項を再考してみたい。
 第一は、ギリシャのGDPがユーロ通貨圏GDP合計に占めるシェアは2.6%に過ぎないのに対し、タイのASEAN10カ国に占めるGDPシェアは17.8%と大きいことである。換言すればEUにはドイツ(シェア26.8%)、フランス(シェア21.4%)という全体を支える国が存在するのに対し、タイはインドネシア(シェア36.4%)に次ぐGDP第二位の域内大国なのである(4月に発表されたIMFの「World Economic Outlook Database」)。
 第二は、通貨切り下げや金利調整のOptionの有無である。ギリシャは統一通貨国であるため、この二つの選択肢が無いのに対し、タイには、ASEAN全体への配慮が必要とはいえ、為替、金融両面での通貨主権と自由度を保持しているのである。
 第三は、ギリシャ問題は、国際資金移動が経済に与える影響を再確認したことである。アジアでも、既に1990年代後半にタイからの資金引き揚げが、インドネシア、マレーシアのASEAN域内への波及にとどまらず、台湾、香港、韓国にまで波及したことは記憶に新しい。
 ここで改めて思い起こされるのが統合のDeepening とWideningの論議である。ギリシャ問題はEUのWideningが先行し、通貨主権と財政主権にギャップを生じさせたことに起因すると言えよう。地域統合には、Deepeningによる求心力とWideningによる遠心力との均衡が大切なのである。ASEANが、このユーロ圏の経験をどの様に生かせるか注目したい。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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