ホーム > 眞野輝彦コラム > 「地域統合の必要条件再確認を」

眞野輝彦コラム

2010.06.21 「地域統合の必要条件再確認を」

―経済同質化が不可欠―

 EUとIMFの協力でギリシャ国債の借換が可能になり、当面の問題は回避された。しかし、EU全体の実質GDPに占める比重が、2.6%に過ぎないギリシャの財政問題が、EU全体の問題に拡大し、更に、世界経済への悪影響が心配されているのが現状である。発端が、巨額の財政赤字問題であったことから、「財政統合なき通貨統合の脆弱性」に焦点が当てられたが、問題の本質は、参加国経済の異質性にあることを忘れてはならない。その確認のためにEU統合の過程を振り返ってみたい。
 EU統合の当初の中心的論議は、フランスに代表される「金融・通貨統合が経済を同質化させる」というマネタリスト派と「経済の同質化が通貨統合の前提」であるとするドイツ中心のエコミスト派との対立であった。この間に、二回の西ドイツ勤務を経験した筆者はエコノミスト派の代表であるKarl Schiller西独経済相の主張を懐かしく思い起こしている。
 この基本的対立の妥協点を見出し、EC発足を可能にした要因は二つに大別される。
 第一は、20世紀前半に経験した二度の大戦を再び繰り返さないという独仏を中心とする政治的要請である。冷戦終結後には、東西統合されたドイツをEUに引きとめることに変化した。
 第二は、経済規模の拡大である。米国や日本との国際競争に勝ち残るためには、規模の小さい欧州各国を統合し、Single Marketを実現させることが不可欠であった。この要請は中国、インドなどの参加による国際競争の激化で更に拍車が掛けられている。
 独、仏、伊、ベネルックス等の諸国の経済同質性が、第一の論争の克服を可能にしたのである。その後論議は「深化と拡大」に変化したが、規模拡大の必要性が優先され、経済異質性が残るギリシャも、2001年ユーロに参加することになったのである。
 日本が位置する東アジアでも種々の共同体論義が提起されている。経済同質化の進行状態と関係国の統合に向けた政治的意志の存在を確認しながら、具体的な計画を進めることが肝要である。

(注)

本コラムの内容は自由に引用していただいて構いませんが、引用される際は、必ず「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページから引用」等の表現により、ソースを明記していただくようお願いいたします。

ホームこのページの先頭へ