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眞野輝彦コラム

2010.07.21 「消費税と経済成長」

―経済論理の矛盾―

 民主党の参院選での敗北は、政治とカネの問題、座標軸の定まらない内外政策、特に自民党に相乗りした形での消費税率引き上げ問題の提起への選挙民の失望と拒否反応であると言えよう。
 菅総理の消費税発言の背後には、税金を徴収しても、他方で同額を国民に還元すれば、経済にマイナスの影響はない。将来性のある分野へ再配分することにより、成長も期待できるという論理があるようである。しかし、この論理には多くの疑問がある。
 第一は、タイム・ラグの存在である。まず、先行する徴税から再配分するまでの所要時間と、有望分野への配分結果が顕現するまでに時間的ずれが発生し、原因と結果の検証が困難な点が指摘されること。特に、後者の短期的効果には多くを期待できない。期待できる可能性のある多くの分野では、既に、民間が先取りしているからである。
 第二は、マクロ経済面では、徴税金額が全て還元されたとしても、ミクロ経済面では負担者と受益者が異なり、今のような景気状態では、負担者に及ぼすマイナス効果の方が大きいと予測される。
 第三は、徴税、再配分作業にはコストがかかり、その作業だけでもマイナス効果が懸念されることに加え、更に大きな政府に繋がりかねない危険性があること。
 第四は、配分の優先度を選択する公的機能の問題である。過去の実績からはみれば、仕分けの対象になっている無駄や利益誘導的行動の再発も否定できないのである。
しかし、日本経済は少子高齢化による年金、高齢者医療費、介護費の急増という景気回復だけでは解決できない構造的問題を抱えている。思いつきや小手先の調整ではとても対処できないのである。
 国家戦略室の組織存続が話題になっているが、組織はともあれ日本経済の将来像を示し、歳出・歳入予測を整理し、その中で税制全体の問題を早急に国民に示すことこそ急務であり、景気対策の第一歩と思料する。

眞野輝彦 眞野 輝彦 (まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 客員研究理事
1956年4月東京銀行入行。本店営業部、ロンドン、デュッセルドルフ、為替部、ニューヨーク、フランクフルト、スイス東京銀行、調査部などに勤務
1985年6月東京銀行取締役に就任
1992年2月東京銀行 参与
1996年4月合併により東京三菱銀行 参与
1999年2月東京リサーチインターナショナル 参与
2004年2月東京リサーチインターナショナル 客員研究理事
2006年1月合併により三菱UFJリサーチ&コンサルティング 客員研究理事
その他役職日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会学識委員
国策研究会 評議委員会議長
国際通貨研究所 評議委員
東アジア共同体評議会 議員
日本国際フォーラム 委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists 会員

(注)

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