眞野輝彦コラム
2010.08.11 「日本国債金利1%割れ」
―実質金利と名目金利の差―
8月4日の東京債券市場で10年国債の利回りが0.995%と7年ぶりに1%を下回った。その後、国会論議での財政赤字削減の難しさを反映してか、1%台を回復しているが、この機会に問題の背景を整理しておきたい。
第一は、実体経済への不安である。米国経済の二番底リスク、欧州でのギリシャ問題の後遺症、発展途上国の経済成長の鈍化、輸出依存の高い日本の経済体質による将来の不安などである。消費や投資への影響は、名目金利よりも実質金利の方が大きいが、日米実質国債金利(10年国債利回り―消費者物価上昇率)を比較すると、円は2.0%{1.0-(-1.0)}、米ドルは1.89%(2.98-1.10)と実質円国債金利の方が高い。他方、資金の国際的な移動では、ハイ・イールドを求める資金運用者は、名目金利をより重視する。名目金利の安い円のキャリー・トレードはその好例である。
第二は、各国国内での株価や土地・不動産などの価格下落リスクである。最近の各国国債市場への資金集中は、株価や資産変動リスクの増大を反映している。利回りが3.5%を超える日本の株式も多いが、平均株価が不冴な原因は、株価下落リスクの反映である。しかし国債(特に残高の多い日本国債)にも金利変動のリスクがあることも忘れてはならない(本年4月21日付け「預金はHigh Return Low Risk運用」参照)。
第三は、為替相場の変動リスクである。国際資金運用には為替相場の変動リスクが付きものである。ここでは実質金利よりも名目金利の相対比較が問題になる。名目金利の高い通貨の先物為替相場にはディスカウントが、金利の安い通貨にはプレミアムが付くことで、国際資金移動の均衡が保たれる。勿論、政治など経済外問題が先物均衡の混乱要因となることを忘れてはならない。円高は輸出に悪影響があるが、2009年1月時点と比較し現在の実質実効為替相場はむしろ円安に振れている。賃金上昇に多くを期待できない家計にとって円高が福音である。殊に、穀物や原油価格が大幅に上昇している状況では尚更である。
実質金利と名目金利の違いを充分認識することが肝要である。
(注)
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