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眞野輝彦コラム

2010.08.23 「輸出と賃金上昇リンクの切断」

―円高を消費拡大に―

 4〜6月の実質成長率が鈍化したことから、政府は景気対策を迫られている。政策策定にあたり、経済環境の変化を充分認識することが肝要である。公共投資は、財政赤字の累積による限界があり、また、輸出増加政策も壁にぶつかっているからである。日本と東アジア各国との間に大きな賃金格差があるため、輸出増加―企業業績拡大―景気回復―賃金上昇という成長リンクは断ち切られていると考える。自動車など主要製造業の現地生産は益々拡大し、輸出相手国市場向けの生産から日本国内向けの生産までも海外に移転され、日本国内の生産や雇用の拡大に繋がらないのが現状なのである。最近の円高が問題との論議もあるが、実質実効為替相場はむしろ円安に振れている。為替相場では調整できないほど途上国との賃金格差が大きいことを再確認する必要がある。
 公共投資も輸出もダメとなると、民間需要の拡大が唯一の選択肢となる。民間需要は消費と設備投資に大別されるが、輸出を前提とし、供給過剰になっている現状では、既存産業の設備投資には多くを期待できない。残るは消費であるが、賃金上昇が望めない環境下では、低価格の輸入品を増加させ、所得の実質購買力を拡大することが必要になる(本年3月23日付コラム「所得効果から価格効果へ」参照)。既に大手スーパーなどでの円高還元セ−ルが始まっている。夥しく積み上がった外貨準備を活用する必要があり、天然資源に乏しい日本が、手にした資源を輸出に回し、減価する米ドルに替えて保有し続けることは賢い選択ではないと考える。因みに、8月18日付け産経新聞によれば、「外国為替資金特別会計」で、為替評価損が過去最大の約30兆円に膨らんでいると報じている。
 今年の経済白書も内需拡大への構造改革が必要なことに触れている。輸出依存体質からの離脱が必要なのである。そこに痛みが伴う事は言うまでもない。しかしそれが出来ないと日本の国民生活はこれ以上豊かにならないと考える。海外の景気動向に振られやすい輸出主導の経済から、安価な輸入品による消費拡大に繋がる政策を期待したい。

(注)

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