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眞野輝彦コラム

2010.09.01 「対症療法の限界―円高問題―」

―病根は恒常的な経常黒字に―

 8月23日の菅総理と白川日銀総裁の電話会談の後に具体的な対応策が打ち出されなかったことが市場に失望感を与え、円相場が上昇し一時83円台にまで上昇、24日の日経平均終値も昨年5月1日以来1年4カ月ぶりに9,000円の大台を割り込んだ。 政府に対する景気対策への催促相場と言えよう。
 市場が期待しているのは、更なる金融緩和や為替市場での介入等であろう。しかしこれらはいずれも対症療法であり、病根の根絶にはならない。円高の要因は、投機的な円買いや国境を越える資本移動など種々あるが、円高に動く基本的要因は日本の対外貿易黒字にある。因みに、8月25日に発表された7月の貿易統計(速報)によれば、貿易収支が8,042億円と14カ月連続の黒字、前年に比べ119.9%の増加となっている。中国の黒字も問題になっているが、日本はその中国に対しても黒字を計上している。この黒字は、為替相場の今の水準が必ずしも円高ではないことの証左とも言えよう。
 天然資源小国の日本は、折角手に入れた生産資源を、国民生活を豊かにするために使う構造改革が必要である( 本年8月23日.付「輸出と賃金上昇リンクの切断―円高を消費拡大に−」参照)。構造改革の必要性は今に始まったことではない。対米貿易摩擦の強まりを受けて、1986年4月に当時の中曽根内閣に提出された「国際協調のための経済構造調整研究会報告書」、所謂前川レポートに既に取り上げられた問題である。
 問題の所在が分かっているにも拘わらず、わが国はこの問題に真剣に取り組むことなく対症療法に終始してしまった。2003〜4年にかけての巨大なドル買い介入(120〜100円)は構造改革の先延ばしに過ぎず、その結果、世界最大の公的債務を抱えることになったのである。
 対症療法には限界がある。内需主導の構造改革に真剣に取り組むことこそ、為替相場の安定化策なのである。

(注)

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