子どもの育ちを支える地域と学校の関係づくり

2007/04/09 善積 康子
教育
子ども
学校

教育分野での調査依頼がここ数年増えてきた。教育は学習指導要領の世界であり、ビジョン作成などは教育委員会で完結されることが多いのだが、教育においても従来の学校教育の枠組みだけではない視点を強く求められるようになったからなのだろうか。例えば、少子高齢社会のなかで、充実した“教育”を提供することによって教育熱心な市民をより多く自都市に定住してもらいたいといった自治体の戦略としての考え方もあろう。しかしながらそういったことは傍流で、やはり根本にあるのは、子どもの育ちを危惧し、子どもと関わりをもつあらゆるところが協力していく重要性について認識が共有化されつつあるからと思っている。行政施策はともすれば縦割りで、特に教育委員会は組織として系統が分かれていることもあって、行政内の横の連携が課題と認識されているところも少なくない。
今、市民協働が主流となる中で、行政のパートナーとなるコミュニティの自治能力が問われている。単に地域の理解と協力を得るというだけではなく、市民が主体的に取り組むことが求められている。制度も、全国一律の運用ではなく、地域の実情に応じて運用に幅を持たせるというのが政策の流れにあり、その実情とは、自らの地域の将来像をどのように考えるのか、その想いが地域の総意なのか、地域として維持管理や結果として生まれた資源を活かした活動が出来るのか、といったものを指す。
コミュニティスクールなど教育において地域との連携に力を入れ、先進的な取組をされている京都市では、「まちづくりは人づくり」という考えを基本にしているが、まさに今学んでいる児童生徒達が、地域との関係を深く築き、地域への思い・愛着・まちを考えること・知っている人を増やすこと、地域の産業を体験することなどが盛り込まれてこそ、やや大げさな表現だが次世代の都市経営は強固なものとなるといえよう。なによりも、学習した結果を実生活との関連で体系づけて学ぶ機会を得た子ども達の考える力、学力も向上するという結果も報告されている。
当社が小中学生と保護者に対して実施した実態調査のなかで、起床や就寝の時間や朝食の有無、テレビ等の視聴時間の長さ、家族と食事を共にしているかといった点で地域差が現れた。学級崩壊など学習に打ち込むことが困難な学校がある地域では、生活時間が全般に遅いほうにシフトしていたり、朝食を取っていなかったりしている子どもの出現率が比較的高く、また学力についても相対的に意欲が低くなる傾向にあった。
家庭の問題が第一義的にあると思うが、地域が子ども達と挨拶などをして関わりをもつ、一緒に過ごす機会を作る、はらっぱや自由に音楽演奏できる場所など子どもの居場所をつくることに力を貸すことで、子ども達の育ちを応援することが出来るのではないだろうか。そこに、地域に最も身近な存在である学校が場所や機会を提供し、運営を地域がするという関係が求められる。
よく、保護者が働きにでて、子どもの見守りなどを地域に押しつけて・・、と言う声を聞く。無関心でまったく協力しないことは論外だが、働くことで経済的に社会を支えることも重要な役割であり、これまでもそうした世代間の役割分担によって社会は維持されてきた。特に少子高齢社会では働き手をいかに確保するかは重要な課題といえる。“公の意識”について親教育も必要になっているのは事実であるが、その上で、地域に説明をし、理解を求めていくプロセスも重要なのだろう。こうしたことをもっとも実行しやすいのが、両者が接点を持つ学校という場だと思う。これからの社会の中心となる子どもの育ちを地域社会が積極的に応援することこそ、重要な都市戦略になるような気がする。学校として、そうした視点も含めてコミュニティスクール運営に是非取り組んで欲しい。

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