日本の文化資源を活用した海外市場展開

2007/10/29 長尾 尚訓
文化

~中小企業の海外市場戦略~

クール・ジャパン

アニメ、ゲーム、映画、ファッション、音楽等、日本のポップカルチャーが世界で注目され、特に若い世代には「COOL」と高く評価されているようである。ニンテンドーDSの「ポケットモンスター」シリーズは世界の累計販売本数が1億1,000万本を超える大ヒットを記録した。ハローキティ、村上春樹、菊地凛子、硫黄島からの手紙、カラオケ等多くの日本の文化的な要素をもつコンテンツが世界で受け入れられている。また、ポップカルチャーだけではなく、日本食や寿司も欧米やアジアの多くの国で浸透している。
この「クール・ジャパン」は、日本文化の独自性が世界で評価されるようになり、日本文化がビジネスの要素として成立する時代を迎えたことを示唆しているといえよう。

日本文化とものづくり

3年前に上海の高級美容室を訪問する機会があったが、中国の若い美容師は日本の美容雑誌から流行の髪型やカット技術を勉強しており、日本の有名スタイリストが使っている日本のハサミに対して強い憧れをもっているとのことであった。また、フランスでは最高級レストランの高名なシェフが日本独特の美しいデザインの包丁を愛用していることがマスコミで取り上げられたことが契機となり、日本の美しい高級包丁がよく売れるようになっている。その他、伝統的な家具メーカーが米国の億万長者を顧客としていたり、和紙メーカーにフランスの高級ブランドから引き合いがあるなど、ゲームなどのコンテンツだけではなく、ものづくりの分野にもクール・ジャパンの影響は及んでいる。これらの事例をみると、日本の優れたものづくり技術に、日本独自の文化を組み合わせることで、高い評価を獲得しうるという仮説が考えられる。

日本の文化資源を活かしたものづくり企業の海外展開

消費財を供給する多くの中小企業は、差別化、高付加価値化という課題を抱えているが、日本文化への注目が高まる中、そのトレンドに着目して、日本の文化資源を活用して海外市場への展開を検討してみてはどうだろうか。その成功のためには、トレンド設定に影響力をもつキーパーソン(先の例では、日本の有名スタイリスト、フランスの高名なシェフ)に認められること等の課題をクリアする必要があるが、「優れたものづくり技術」と「日本独自の文化」の2大エンジンがあれば、政府の産業政策面での後押しもあり、様々な課題をクリアできる可能性も高いと考えている。この視点から自社の海外展開についてご検討いただくよう提案したい。

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