ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)

2008/03/31 矢島 洋子
ワーク・ライフ・バランス
共生
ダイバーシティ

昨年12月総理大臣官邸において「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が、政労使による調印の上決定されました(注1)。内閣府のHPによれば、憲章は、「国民的な取組みの大きな方向性を示すもので、いま何故仕事と生活の調和が必要か、それが実現した社会の姿、関係者が果たすべき役割をわかりやすく」示したもの、行動指針は、「企業や働く者の効果的な取組、国や地方公共団体の施策の方針を示すもの」で、社会全体の具体的な数値目標を示しています。
2007年度に入ってから、政府の公表資料やマスコミで盛んに「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が使われています。では、実際には、働く場である企業において、どのような取組みが行われているのでしょうか。
当社では、昨年11月に首都圏の上場企業を対象に行った調査を行いました。この調査は、「ワーク・ライフ・バランス塾」(注2)と学習院大学経済経営研究所が共同で開発した「WLB-JUKU INDEX」に基づくもので、今回の調査は、当社と学習院大学経済経営研究所が共同で実施いたしました。かなり詳細な取組状況をうかがう調査でしたので、回答企業は39社にとどまりましたが、「企業におけるワーク・ライフ・バランスを促進する取組の現状」と「ワーク・ライフ・バランスの効果についての人事担当者の認識」等について貴重な情報を得ることができました。
回答企業においては、「短時間勤務制度」や「フレックスタイム制度」は、6割前後「導入」されていました。一方、「在宅勤務制度」や「配偶者の転勤への配慮」、「キャリアカウンセリングの設置」などは、「ワーク・ライフ・バランス促進効果がある」と考えられている割には、導入率が低い状況です。また、「社内のワーク・ライフ・バランス推進体制」としては、「社員の意見汲み上げ」や「社員への情報提供」を行っている企業は4割を超えるものの、「推進状況のモニタリング」や「管理指標への取り入れ」など、推進状況を評価していく取組を行っている企業はわずかでした。「ワーク・ライフ・バランス支援策の成果」としては、「女性の採用」や「定着率」、「女性社員のモチベーション向上」には効果があると認識している企業が多いものの、「男性」への効果を認める企業は少ない状況です。ただし、内閣府で行われている個人を対象とした意識調査(注3)では、ワーク・ライフ・バランスがはかられていると、女性や既婚者だけではなく、男性や未婚者の「仕事の満足度」や「意欲」も高いといった結果が出ています。このあたりは、働く個人と企業人事との意識ギャップかもしれません。
日本におけるワーク・ライフ・バランスの取組は始まったばかりです。しかし、「すでに一歩を踏み出している企業(これまでの両立支援や男女の機会均等の取組をベースに様々な制度を導入している大企業や、制度は整ってはいないけれども従業員のニーズを組み上げ柔軟な働き方を可能としている中小企業など)」と、「まだ様子見をしている企業」との温度差は大きいと考えられます。一方、働く人やこれから就職をしようとする学生のワーク・ライフ・バランスについてのニーズは高まっており、この春の採用では、企業の採用担当者はおそらくそのことを痛切に感じ取るはずです。2007年度は、「ワーク・ライフ・バランス元年」と言われましたが、多くの企業が本腰を入れるのは、来年度からかもしれません。

(注1)http://www8.cao.go.jp/wlb/charter/charter.html
(注2)ワーク・ライフ・バランスの推進を目的に2004年から活動期間を3年間と定めて自発的に作られた企業間ネットワーク。
(注3)内閣府「男女の働き方と仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する調査」

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