PPPによる公共経営の現場から

2009/08/03 岩田 雄三
PPP
官民協働

2007年に発生したサブプライム問題により世界経済に大きな陰を落としている。法人税収入等が大きく減少し、非常に厳しい財政逼迫状況に直面している公共団体も多い。PFI(Private Finance Initiative)、指定管理者制度、民営化などの民活手法は、財政負担軽減を目的とするものであるが、民活手法の現場においても昨今の金融収縮が影 響を与えている。
PFIは、民間資金を活用し公共施設を整備するものであるが、金融収縮により、金融機関の融資姿勢が消極的に、あるいは事業リスクに対する融資審査が厳格となり、調達金利(スプレッド)が上昇している。PFIにおいては、公共ニーズや事業収支に変動要因が少ないことから、比較的低利で民間資金を調達することができ、また、事業者のキャッシュフローはタイトなものであることが一般的である。このことが財政負担の軽減、VFM(Value For Money)導出の一要因ともなってきたが、調達金利が上昇すれば事業費が増額し、財政負担の軽減幅が小さくなる。また、事業リスクに対する査定やリスクを負担する構成員に対する信用管理がより厳格になったことに伴い、リスクに応じたコストが事業費(入札価格)に転嫁されることも想定される。
ただ、このようなリスクと事業費の関係に関する考え方は、本来PFI等の民活手法の基本概念である。民活手法にいては、リスクの移転は、適切に管理できる主体に移転がなされ、その結果として、VFMの最大化を図るという考え方に基づいている。また、金融機関の融資審査が厳格になることは、事業に対する審査・評価が厳格になり、事業運営の安定性、継続性を図る上でも有効である。
官民パートナーシップ=PPP(Public Private Partnership)の枠組みが定着するなか、民間資金や民間ノウハウの活用を通じて、公共経営も世界の金融市場と様々な面においてリンクしている。今回の金融収縮によって、このことがより鮮明になった。
民活手法は、業務やリスクを外部化することによって、業務の効率化、事業費の低減を図るものであるが、過度な外部化は公共団体の主体性がなくなり、万が一の事態に、公共サービスの継続性を確保することができない。公共団体としては、リスク分析や事業費の積算の精度を高めること、モニタリング等を通じてサービス水準やリスク管理を図ることが重要であり、事業のあらゆるフェーズにおいて公共団体としてガバナンスを確保する必要がある。

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