『防犯のつながり』を『地域の絆』へ

2010/09/24 高松 孝親
防犯

近年わが国においては、自治体・警察、地域住民等の連携による防犯まちづくりの活動が活発化してきており、1996年以降急激に増加してきた刑法犯認知件数も2003年以降減少に転じる成果を得ている。
各地の防犯まちづくりは、その地域もしくは近郊における住民不安感を高める犯罪・事故などの発生が、活動開始のきっかけとなっていることが多い。防犯まちづくりの取組の興味深い点は、古くからの地域コミュニティが残っている地域だけではなく、住宅地・マンション開発等によって形成された比較的新しい地域においても活動の展開が見られることだ。「自身の財産、家族の命を守る」という防犯まちづくりのテーマは、共感されやすいテーマであることから、地域コミュニティの希薄化が課題となっている現在のまちづくりにおいて、地域の課題解決に向けて住民同士で協力活動を行う、きっかけとなっている。
しかし、防犯をテーマとした活動は、災害・事件発生の直後は熱心に活動が展開されるものの、特定メンバーへの活動負荷の集中、金銭的な問題、活動の成果が見えにくい(自分たちの活動により犯罪が減っているという実感が得られにくい)ことによるモチベーション低下等、活動継続には課題が多いことが指摘されている。
愛知県安城市では、「花育てによる安全なまちづくり ~見守りフラワーポット大作戦」に取組んでいる。防犯パトロール等の特別な行動を実際に行うことができる人は限られることから、「無理なく、誰でも、長続きできる別の目的の活動に、防犯の視点を加える」という発想のもと、揃いのフラワーポットを各戸の玄関先等に設置して、小学生の登下校時に水やりを行う取組が実施されている。これにより、登下校時間帯にまちなかの子どもたちへの見守りの目が自然に増えるだけでなく、揃いのフラワーポットにより緑・花に彩られた美しい街並み景観が形成される効果もある。
また、神戸市では地域が自主的に夜間照明のルールをつくり、防犯性能の向上と夜間の街並み景観の改善を図ることを目的とした「灯かりのいえなみ協定」の締結に向けた検討が各地で進められており、地域での調整をサポートするため、アドバイザー派遣の支援等をおこなっている。
両市の事例は、「防犯のためだけ」でなく「防犯にも役立つ新しいテーマの取組」を行うことで、防犯効果と新たなまちの魅力を生み出す効果も得ようという一挙両得の取組の好例といえよう。犯罪発生を未然に防ぐためには、全国に芽生えた『防犯のつながり』を『地域の絆』へと定着させる新たな取組の普及が不可欠である。

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