食品ロス削減推進法施行から2年、取組は進んだのか?-家庭系食品ロスのさらなる削減に向けて―

2021/12/03 松岡 夏子、加山 俊也、細井 山豊、兼澤 真吾
サステナビリティ
3R
廃棄物
脱炭素

1. はじめに

2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行され、2年が経過した。Google Trendsで検索ワード「食品ロス」の人気度(検索回数)を調べると、同法が公布された2019年3月に急上昇して以降も一定の高さを維持しており、この数年で社会的な関心が高まったことが伺える。コロナ禍において、外食産業や学校給食で使用される食材の需要が低迷し、連日のようにマスメディアやSNSで食品ロスの問題が取り上げられたことも影響しているだろう。2021年3月に実施された消費者庁の意識調査においては、食品ロス問題の認知度は79.4%、食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人の割合は76.6%であり、いずれも施行前から5ポイント程度上昇している1

本稿では、食品ロスのうち、特に家庭から発生する食品ロス(家庭系食品ロス)について、同法施行後の取組の進捗状況や、先進的な自治体等で実施された調査から得られている知見を紹介し、今後の削減に向けたポイントを解説する。

2. 家庭系食品ロスの特徴

家庭系食品ロスは、以下のように、①食べ残し、②直接廃棄(「手つかず食品」とも呼ばれる。)、③過剰除去の3種類に分類される。

図表1 家庭系食品ロスの分類

種類 ①食べ残し ②直接廃棄(手つかず食品) ③過剰除去
発生量 117万トン(45%) 107万トン(41%) 38万トン(15%)
概要 作り過ぎ等によって廃棄される調理済みの食品

期限切れ等の理由により そのまま廃棄される食品

調理時に可食部位にも関わらず廃棄されるもの

(出所)環境省「令和2年度 食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査 報告書」(2021年3月)を基に筆者作成(写真は筆者撮影)

家庭系食品ロス量は減ったのか

家庭系食品ロスの日本全国の発生量は、市区町村における発生量の調査結果を積み上げて、調査を行っていない市区町村についても拡大推計することで算出されている。直近の2019年度の発生量は、約261万トンと推計されており、過去5年間で見るとほぼ横ばい~微減傾向が続いている2。ここで注意しなければならないのは、家庭系食品ロス量は推計に基づく部分が多く、そもそも把握が難しいということである。現時点では発生量の増減のみで取組の進捗評価を行うことは困難だが、国内では環境省が市区町村における実態調査の支援を通じて発生量の推計の精緻化を図っており、世界的に見ても、国際機関を中心に把握手法の議論がされている段階である。

図表2 家庭系食品ロス量の推計結果の推移(過去5年間)

図 家庭系食品ロス量の推計結果の推移

(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「令和2年度食品循環資源の再生利用等の促進に関する実施状況調査等業務報告書」(2021)
(注記)環境省からの受託事業として弊社が調査・分析した結果

過小評価されがちな家庭系食品ロス

では、消費者の意識や行動はどうだろうか。

家庭系食品ロス量の約261万トンという数値は、実は食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業から発生する食品ロス(いわゆる「事業系食品ロス」)に匹敵する量であり、国全体の食品ロス量の半分を占めている。しかし、マスメディアやSNSでは、恵方巻等に代表されるスーパーマーケット等の事業系食品ロスや、収穫されずに廃棄されてしまう規格外野菜等が注目されることが多く、消費者には家庭系食品ロスのインパクトの大きさが意外と知られていない。事業系食品ロスと比べて、解決すべき問題として認識している人の割合が少ないという調査もある3。さらに個人レベルで見ても、消費者は家庭で自身が廃棄している食品ロス量を、実際の量よりも少なく見積もる傾向があることが報告されており4、家庭系食品ロスは、食品ロスへの社会の関心が急上昇する状況においてなお、過小評価されているのが現状である。

図表3 特に解決すべきと思う食品ロスの問題

図 特に解決すべきと思う食品ロスの問題

(出所)神戸市「神戸市食品ロス削減アクションメニュー(改訂版)」(2021)
(注記)神戸市からの受託事業として弊社が調査・分析した結果

一方、そもそも家庭系食品ロスは、一家庭あたりから発生する量は基本的に少ないため、過小評価はやむを得ない面もある。また、食品ロスの発生には、個人の食に対する嗜好や、食品の購入・調理・喫食といったライフスタイル等の様々な要因が影響する。削減につながる行動の鍵は人によって異なり、最大公約数の取組やサービスを打ち出しにくく、話題になりづらいという面もある。なによりも、食品ロスの削減がコスト削減に直結する事業者とは異なり、家庭においてはコストとして意識されにくいという構造も影響していると考えられる。

自治体の施策の現状

同法において家庭系食品ロス削減の推進役に位置づけられた、自治体の現状はどうだろう。環境省が全国の市区町村を対象に実施しているアンケート5によると、食品ロスの削減目標や食品ロス削減推進計画を策定済または策定予定の市区町村は1割程度で、今後増加していくことが期待されるが、決して芳しいとは言えない。実施中の施策を見ても、WEBサイト等での情報発信を行っている市区町村が約6割と最も多く、さらに踏み込んでフードドライブ6や市民向けの講座等を行っている市区町村は、人口規模の大きい都市部を中心に1割程度にとどまっている。

今後、政府が掲げる「2030年までに食品ロスを2000年度比で半減させる」目標の達成に向けて、効果的な取組の検討・普及を図ることが急務である。

図表4 食品ロス量に関する目標策定の有無

図 食品ロス量に関する目標策定の有無

(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「令和2年度食品循環資源の再生利用等の促進に関する実施状況調査等業務報告書」(2021)
(注記)全市区町村アンケートの結果。総回答数1,666件、回収率95.7%
(注記)環境省からの受託事業として弊社が調査・分析した結果

図表5 食品ロス削減推進計画の策定の位置付け

図 食品ロス削減推進計画の策定の位置付け

(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「令和2年度食品循環資源の再生利用等の促進に関する実施状況調査等業務報告書」(2021)
(注記)全市区町村アンケートの結果。総回答数1,666件、回収率95.7%
(注記)環境省からの受託事業として弊社が調査・分析した結果

3. 削減につながる施策のポイント

効果的な取組を検討するにあたり、これまでに明らかになっている知見をもとに、いくつかのポイントを紹介したい。

「保存の工夫」の情報発信は「使い切り」とセットで

家庭系食品ロスのうち、「直接廃棄」に占める割合が最も大きい食品は生鮮野菜である7。「使い残しがいつの間にか傷んでしまった」というようなケースが多く、その対策として「水で湿らせた紙で包みプラ袋に入れる」「加熱してから冷凍する」などの保存方法の工夫を冊子等にして配布する取組は、全国的に行われている。

しかし、神戸市が2017年に行った調査では、保存方法の工夫を記載したチラシを配布したグループと配布しなかったグループを比較したところ、4週間の調査期間において直接廃棄の発生量に差は見られず、保存方法の工夫により生鮮野菜の使用期間は延びたが、最終的に使い切られずに廃棄されてしまう可能性が示唆された8。保存方法の工夫は消費者の関心が高く、取組のきっかけとして情報発信を行うことはよいが、使い切り行動とセットで推進することが肝要である。

重点ターゲットを設けるなら子育て世帯

前述したように、食品ロスの量は、食品の購入や調理に関するライフスタイル等に大きく影響される。食品ロスが多い属性を特定することは容易ではないが、そのなかで特定されている数少ない属性が「子育て世帯」である。神戸市や仙台市が行った調査では、子どものいる世帯では「食べ残し」が発生する回数が多いことが確認されており、食べ残し理由の5~6割を「子どもの食べ残し」が占めている。子育て世帯のなかでも、特に乳幼児世帯での食べ残しが多いという報告もある9。さらに、神戸市の調査では、子どものいる世帯は「直接廃棄」も多いことが確認されている。また、食品を無駄にすてない行動には15年以上の家事経験が必要であることを指摘する報告10から見ても、子育て世帯は重点ターゲットとして位置付けられる。

子育て世帯は、自治体で食品ロス削減を管轄する環境部局が日常的に接点を持っている層ではないため、子育て支援や教育関連の部局、関連する民間企業、NPO等と連携して施策を組み立てることが有効と考えられる。

高齢世帯は作りすぎの習慣化の改善を

子どものいない世帯について見ると、仙台市の調査では、食べ残しの発生件数は年代が上がるほど増加し、高齢世帯で最も多く、食べ残し理由の約3割が「作りすぎた・量が多かった」であった11。神戸市の調査でも、単身高齢者の食べ残し量の多さが指摘されている。筆者らも参加した市民ワークショップでは、自身の食事量の減少や、子どもの自立等で家族の人数が減少しているにもかかわらず、習慣化した調理の方法で以前と変わらない量を作っていることが、食べ残しの増加につながっているという意見が複数挙げられた。さらに、食べ残し理由として次に多いのは、「残り物を保存・放置して忘れていた」であり(約2割)、食べきれずに保存していた料理も廃棄してしまっている状況が見えてくる。

対策としては、適量調理を促すために、習慣化している調理量を見直す機会をつくることである。仙台市では、「使い慣れた大きめの鍋で、作り慣れた分量を作っているので、多めになる」というワークショップでの市民の声を踏まえて、小さめの鍋を用いた調理教室を開催するなどしている。

食品ロス「記録式ダイエット」のすすめ

冒頭に述べた、家庭系食品ロス量が過小評価されがちである問題については、体重の「記録式ダイエット」と同様に、自身が廃棄した食品ロスの記録を付けると削減につながることが確認されている12。この記録行為は「食品ロスダイアリー」と呼ばれ、紙媒体の様式に加えて、スマートフォンアプリが無料で公開されており、廃棄量から換算した廃棄金額や、他の利用者の廃棄量との比較もできる。食品ロスに一定の関心がある層には、「食品ロスダイアリー」の利用を呼びかけることで削減効果が期待できる。

一方で、食品ロスに対する関心が低く、アプリのダウンロードが手間であると感じるような層に対しては、他の人と比較して自身の食品ロス量が多いのか少ないのかを直感的に判断できるような情報(その地域の同じ属性の人が捨てている食品の量など)を提示することや、子どもの環境教育の一環として、食品を廃棄した日に〇をつけるカレンダーを配布し、保護者への意識の波及を図るといった工夫も考えられる。

 

今後、以上に述べたようなポイントが参考となり、効果的な施策の検証、普及が図られることで、家庭系食品ロスの削減が進むことを期待したい。


1 消費者庁消費者教育推進課食品ロス削減推進室「令和2年度消費者の意識に関する調査結果報告書」(2021年4月)

2 環境省「令和2年度食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査報告書」(2021年3月)

3 神戸市が2020年に実施した市民モニターアンケートでは、日本の食品ロスの半分が家庭から発生することを知っていた」と回答した市民の割合は36%であった。また、特に解決すべき食品ロス問題は、「スーパーマーケット・コンビニエンスストアの売れ残り」(53.8%)「農家等で流通の規格に合わずに廃棄される野菜」(35.0%)に次いで、「家の冷蔵庫などで期限が切れた・傷んだ食品」(27.8%)が3位であり、「家での自分や家族の食べ残し」(9.5%)は最も選択率が低かった。(神戸市「神戸市食品ロス削減アクションメニュー(改訂版)」(2021)※神戸市からの受託事業として弊社が調査・分析した結果)

4 神戸市の2016年度の調査では、事前アンケートでは「未使用・未開封のまま食品を捨てる頻度」について、「ほとんどない」が約5割(45.7%)、「たまにある」が約4割(38.7%)、「まったくない」が約1割(7.9%)との回答であった。これらの属性別に、調査期間中(4週間、N=302)の廃棄件数(平均)をみると、「よくある」が12.4件、「たまにある」が9.1件、「ほとんどない」が4.4件であり、「まったくない」と回答した世帯でも3.0件発生していた。(神戸市食品ロス削減調査・事業化計画検討業務 ステークホルダーミーティング「食品ロス削減アクションメニュー」(2018)※神戸市からの受託事業として弊社が調査・分析した結果。)

5 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「令和2年度食品循環資源の再生利用等の促進に関する実施状況調査等業務報告書」(2021)全市区町村アンケートの結果。総回答数1,666件、回収率95.7%。※環境省からの受託事業として弊社が調査・分析。

6 フードドライブとは、家庭で余っている食品を集めて、食品を必要としている地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動を指す。

7 神戸市、仙台市で実施された食品ロスダイアリー調査では、季節によってやや変動はあるが、4割程度が生鮮野菜であった。※いずれも各市からの受託事業として弊社が調査・分析。

8 神戸市食品ロス削減調査・事業化計画検討業務 ステークホルダーミーティング「食品ロス削減アクションメニュー」(2018)※神戸市からの受託事業として弊社が調査・分析。

9 京都経済短期大学他「環境省平成31年度環境経済の政策研究 食品ロス削減による経済便益に関する調査・分析研究報告書」(2020)

10 和田有朗「一般家庭における食品ロスに関する消費者の意識と行動の関連」2018, 環境情報科学論文集

11 1日あたり0.07~0.08gずつ食品ロス量は減少し、平均1世帯3か月間のダイアリー記録で3~4割程度の食品ロスが減少することが確認された。(京都経済短期大学他「環境省平成31年度環境経済の政策研究 食品ロス削減による経済便益に関する調査・分析研究報告書」(2020)※研究メンバーとして弊社参画。)

執筆者

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。