定年延長は労働力減少対策に有効も、課題は山積

2023/05/18 丸山 健太
調査レポート
海外マクロ経済
アジア
中国
変化を捉える【経済】

1. 政府は定年延長を模索

中国国家統計局は、2022年末時点の人口が61年ぶりに減少したと発表した。15~64歳の生産年齢人口は、2013年にすでに減少に転じており、今後、労働力の減少ペースは一段と加速し、経済成長の鈍化が懸念される。企業の間では、ロボットの活用による省力化などを通じ、生産性を向上させることで成長力の維持を図る動きが広がっているが、政府は定年の延長を実施し、高齢者の労働力を確保することで、予想される労働力不足に対処しようとしている。

中国では現在、労働関連の法令で定年年齢が定められており、男性の定年は60歳、女性は非管理職が50歳、管理職が55歳となっている。定年と同時に年金の支給が始まり、基本的には賃金労働から引退して孫の面倒をみるなど、家庭内での役割を果たしながら、ゆっくりとした老後を過ごす人が多い。

こうした中、政府は2021年に公表した第14次5ヵ年計画で定年年齢を徐々に引き上げる方針を示し、2022年3月には江蘇省で定年延長が試験的に導入された。2022年末の中央経済工作会議でも時宜(じぎ)を得た定年延長の実施を公約しており、今後、強い反対の動きがなければ、全国的に定年延長が実施される見込みである。今のところ、2023年中に具体的な政策内容が公表される公算が大きく、2025年から徐々に定年年齢を引き上げ、男女とも65歳を定年年齢とするとの見方が支配的である。

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