出口が見えないロシアの家計債務問題 ~社会・政治問題化の恐れが大きく次期大統領選への影響も~

2019/10/15 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済

〇景気低迷が続くロシアで、短期の消費財ローンを中心に、家計の債務が急増している。
〇ロシアの景気低迷が続く主な原因は原油市況(輸出)の低迷と欧米からの経済制裁の二点にあるが、さらにプー チン政権が財政再建を優先していることがそれに拍車をかけている。増税などに伴う可処分所得の減少を補い 日々の消費を回すため、ロシアの家計は銀行からの借入を急増させている。
〇家計の債務問題への懸念からロシア中銀は、10月初から個人向けローンの与信管理を強化し始めた。一方で、 為替相場や物価上昇が安定しているため、中銀は景気をサポートするために引き続き利下げを志向している。ミ クロ政策(引き締め)とマクロ政策(緩和)が相反せざるを得なくなっているところに、現状のロシア経済の苦境がう かがえる。
〇経済の成長が加速する展望が描き難く、また当局が取り得る政策対応にも限りがある。こうした中では、家計の 債務問題が社会不安へとつながり、ポスト・プーチンの権力移譲が課題となる2024年の大統領選に大きな影響を 及ぼしかねない。ロシアの不安定は日本を含めた近隣諸国に悪影響を及ぼす可能性も高い。ロシア社会や政治 の動向を見定める上で、家計の債務問題に動向については引き続き注意を要する。

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