過去最大となった日本のサービス輸出~国際競争力は向上も道半ば~

2024/02/21 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済
  • 近年、日本のサービス輸出は増加傾向にある。コロナ禍で一時大きく落ち込んだものの、2020年を底に回復へ向かい、2023年にはコロナ前の水準を上回って過去最高額を更新した。
  • コロナ前の2013年~2019年の動きに着目すると、日本のサービス輸出の約半分を占める「モノ関連」(例:貨物輸送、産業財産権等使用料)は一進一退で推移したものの、インバウンドの増加を受けて「ヒト関連」(例:旅客輸送、旅行消費)が急速に増加し成長のけん引役になるとともに、「カネ関連」(例:金融サービス)や「デジタル関連」(例:コンピュータサービス)も需要の拡大を受けて堅調に増加し、サービス輸出を押し上げてきた。
  • 一方、コロナ禍以降は、当初はインバウンドの蒸発により「ヒト関連」が急減し、サービス輸出は大きく落ち込んだ。しかし、新型コロナの感染拡大が落ち着くと次第に「ヒト関連」が持ち直しへ向かうとともに、世界的に一段と需要の高まった「デジタル関連」や物流網の混乱の影響で運賃が上昇した「モノ関連」等も増加したことから、足元ではコロナ前を上回る水準まで回復している。
  • この様に日本のサービス輸出は均して見れば増加傾向にあるものの、世界の輸出全体に占める日本のシェアは、コロナ禍前の2019年のランキングとして財が世界5位なのに対し、サービスは世界10位にとどまっている。また近年のサービス輸出の動きは、各国が得意とするサービスの違いやGAFAのようなグローバル企業の拠点の有無等を背景に日本と世界とでは明確に異なっている。日本では「ヒト関連」が世界平均を上回るペースで増加し、成長のけん引役となってきた一方、「デジタル関連」は国際競争力の乏しさから世界平均と比べて緩やかな伸びにとどまっており、特にコロナ禍以降は世界的なデジタル需要拡大の恩恵を十分に享受できていない。
  • 日本は製造業に強みを持つ国として知られているとおり、従来、サービス輸出についてはあまり得意としてこなかった。近年、インバウンドの増加もあって「ヒト関連」を中心にサービス輸出の競争力は高まっているものの、財に特化している輸出構造は変わっておらず、サービスの輸出競争力の向上はまだ道半ばである。それでも、サービス貿易は今後も世界的に成長が見込まれる重要な分野のひとつであり、日本も近年の成長をけん引してきた「ヒト関連」、すなわちインバウンド観光を中心に競争力をさらに高めていくことができれば、サービス輸出も増加を続けることができると期待される。

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